「管理されてはじめて稼げる女性。容姿や年齢にハンディがあるため過激なサービスに頼らざるを得ない女性、福祉や行政とつながれない、もしくはつながっていても生活の困難から抜け出せない女性にとっては、管理売春の場で働くことが唯一の「福音」になってしまう」
また様々なハンディをもった女性は短期的な視野でしか物を考えられず、3カ月スパンの話をしても通じない場合が多いという。そして売れている女性を嫉妬し、自分が売れない原因を人のせいにしてしまうという。池袋にある熟女系風俗経営者は風俗は女性にとってこそ必要だとして、こんなことを語っている。
「風俗はどう考えても必要なんですよ。空いた時間に来られる。シフトも自分で決められる。お金も現金当日払いでもらえる。そんな職場はほぼ無いですよね。仮に風俗が日本から消えたとしても、死ぬほど困る男はいない。でも生活に困窮している女性にとっては死活問題です」
こうしたリサーチを続けた結果、著者が導き出したのが風俗と福祉、そして司法の連携だった。風俗を「女性を搾取する悪者」として排除するのではなく、その存在をグレーゾーンとして認めたうえで「福祉を介して風俗と社会をつなげる」。風俗を福祉と対立させるのではなく連携という協力関係にもっていくというものだ。
「激安風俗店に限って言えば、ソーシャルワークとの相性は決して悪くないはずだ。応募者全採用の店であれば、求人広告を見てアクセスしてきた全ての女性をもれなく捕捉することができる。これまでの行政の窓口や生活困窮者支援制度、そして通常の風俗店では(面接の時点で不採用になるために)決して捕捉できなかった女性を一〇〇%捕捉し、何らかのアプローチを行うことができるわけだ」
そのため筆者は地雷専門店「デッドボール」の待機所で在籍女性に対する無料の生活・法律相談会を行った。知り合いの2人の弁護士と社会福祉士が直接店舗の待機部屋を訪問し、在籍女性たちの相談に乗る。司法・福祉・風俗の連携だ。
その1人、40代後半の信子さんのケースを紹介したい。適応障害だという信子さんだが、やはり精神疾患のあった夫が自殺したため生活保護を受給した。
「しかし夫の死の辛さや寂しさを紛らわすために飲み歩いてしまい、お金がなくなってしまった。信子さんは過去に自己破産の経験があるため、これ以上借金はできない」