「週刊新潮」(新潮社)2016年1月28日号より
SMAP解散騒動を引き起こした元凶“ジャニーズ事務所の女帝”メリー喜多川副社長の実像を検証するこのシリーズ記事も、今回が最後。前回、前々回の記事では、メリー氏に数年前から錯乱としか思えないような傾向が出てきており、その被害にあっているのは飯島マネージャーや中居正広だけではなかったことを指摘した。
娘、藤島ジュリー景子副社長の夫を追放し、幹部社員や可愛がっていたタレントのことまで疑いはじめ、これまで部下に任せていた細かい仕事にどんどん介入し始める。さらには、激昂すると、突然、マスコミに自分から直接電話をかけ、一方的にまくしたてる。こうした暴走に、ジャニーズ事務所の幹部社員も頭を抱えているという。
メリー氏の常軌を逸した行動はどこからきているものなのか。まず考えられるのは、89歳という年齢だろう。
高齢になって、猜疑心が過剰になった、家族や知人のことまで疑い始めてトラブルになる、というのはよくある話だ。その反動で、ひとりの人間だけにやたら依存し、信じ込んでしまう、という話も頻繁に耳にする。メリー氏の飯島マネージャーに対する被害妄想や幹部への疑心暗鬼、逆に、近藤真彦に対する異常な執着などは、こうした老人特有の傾向ではないかというのだ。言うことがコロコロ変わったり、感情を抑えられなくなるのも、そう考えると説明がつく。
実際、昨年1月の「週刊文春」(文藝春秋)に掲載されたインタビューを改めて読み返してみると、メリー氏の発言には支離滅裂な部分がかなりある。質問もテーマはバラエティ番組での共演のことなのに、ダンスの話を始めたり、後継者問題を語っているうちに、近藤真彦の思い出話を延々と語り始め、「私がマッチの面倒を見るのは当たり前だと思う……話しているだけで涙が出てきちゃう」と突然涙を流したり。
中でも象徴的だったのは、インタビューの最後のくだり。後継者はジュリー氏だと再び強調するために、メリー氏はこんなことを語り始めた。
「当たり前の話。だって、ボートに乗ってて浮輪が一つしかなくてさ、何かあったときに、私は浮輪はジュリーに渡す。ジュリーには逃げなさいと言って。よその子には浮輪はあげられないけど、私、全部抱えて泳ぎますよ」
実際に、メリー氏がタレントを守るかどうかは別にして、ここまでは比喩としてよくわかる。問題はこの後だ。