たしかに青木は『ミヤネ屋』の中では、異色の存在だった。『ミヤネ屋』は局自体が政権べったりの読売テレビの制作というだけでなく、安倍首相の“腹話術人形”ともいわれる日本テレビの青山和弘政治部副部長がレギュラー出演し、9月には安倍首相の単独無批判インタビューを放映するなど、露骨に安倍政権に擦り寄りを見せている番組だ。
その中で、青木はただ1人、政権への批判を口にし続けていた。安保法制については一貫して安倍政権の乱暴なやり方を批判していたし、朝日新聞の慰安婦問題でも一方的なバッシングに異を唱え、イスラム国の日本人人質殺害事件でも、安倍首相の演説の問題にはっきり言及していた。つまり、こうしたスタンスが上層部に嫌がられたということらしい。
しかし、青木のリベラルなスタンスは今に始まったことではない。なぜ最近になって急に降板ということになったのか。
「青木さんを起用した『ミヤネ屋』のチーフプロデューサーとその部下の2人のプロデューサーが今年6月に異動してしまったんです。局内では事実上の更迭といわれています。このチーフプロデューサーは『番組に左巻きが1人くらいいたほうが面白い』というような骨のあるタイプで、彼がいたおかげで『ミヤネ屋』はぎりぎりバランスを保ってきた。青木氏についても、上層部に対して防波堤になってきた。そのチーフプロデューサーがいなくなって、番組ががらりと変わってしまったんです。報道姿勢も露骨に政権べったりになって、青木氏のような政権に批判的なコメンテーターも上層部にいわれるがまま排除することになった」(前出・読売テレビ関係者)
なんとなく古賀茂明の『報道ステーション』(テレビ朝日系)更迭劇を彷彿とさせるが、実際、チーフプロデューサーの異動や青木降板の背後には、官邸の圧力と政権の意向を忖度した自主規制があったのではないか、ともささやかれている。
「『報ステ』や『NEWS23』のケースでもそうでしたが、圧力といっても直接、官邸が番組に抗議をしてくるということはでない。政治部の番記者などを通じて、チクチクと文句をつけてくるんですよ。で、そういう声は現場を飛び越えて局の上層部に届けられ、上層部は人事で政権に批判的な人間を現場から外してしまう。実はこれがテレビ局の自主規制の一番多いパターンなんです」(テレビ局関係者)
しかも、今回の青木降板劇には、もうひとつ、大きな要因があったようだ。それは読売テレビの親会社である読売新聞の介入だ。
「チーフプロデューサーが番組を降ろされるすこし前、東京の読売新聞本社のメディア戦略室の幹部がわざわざ大阪の読売テレビに出向いてきたことがあった。その用件はズバリ青木氏降ろしだったようです」(前出・読売テレビ関係者)
実は青木は昨年の朝日新聞慰安婦問題に関し、「サンデー毎日」(毎日新聞出版)の連載で読売新聞の報道姿勢と、独裁的な社内体制を批判する記事を掲載したのだが、これに対し、読売新聞が激怒。内容証明を送りつけてくるという事態に発展していた。そういう経緯もあって、読売新聞が青木をどうにかしろとクレームをつけてきたようなのだ。