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朝日、読売、日経が「新聞に軽減税率」決定を書かない理由…消費増税主張しながら自分達は政権と取引する卑劣

 もちろん、こうしたロビイング活動は新聞業界に限ったことではない。しかし、これら大新聞は、民主党政権のころから消費税法の改正を煽り、昨年の衆院選でも安倍自民党が消費増税の先送りを公約にしたことを社説でそろって批判していた。以降もたびたび、こんな調子の社説を出している。

〈柱になるのは消費税の増税である。景気にかかわらず増えていく社会保障をまかなうには、税収が景気に左右されにくく、国民全体で「薄く広く」負担する消費税が適している。(中略)
 安倍政権は10%を超える増税を否定するが、それではとても足りない。欧州の多くの国が付加価値税(日本の消費税に相当)の税率を20%前後としていることからも明らかだ。〉(朝日新聞15年6月30日付「社説」)

〈留意すべき点は、軽減税率の導入で税収が減る規模によっては、消費税率10%時に約束している社会保障充実策(約2兆8千億円)を実現するのが難しくなる可能性があることだ。(中略)
 消費税は社会保障を支える重要な財源だ。日本の巨額の借金や社会保障費を考えれば、長期的には消費税率を10%を超えて上げていくのが避けられまい。軽減税率の設計次第で、将来の標準税率の引き上げ幅が大きくなりかねない。〉(日本経済新聞15年10月25日付社説)

こんな国民への負担をエラソーに説きながら、一方で自分たちの商品だけは軽減税率の対象に含めよと、裏で働きかけるというのは、姑息としか言いようがない。

 しかも、新聞メディアの場合、政界にロビイングをすること自体が、大きな問題をはらんでいる。言うまでもなく、マスメディアは政治権力から独立して、市民のためにその不正や問題点を明らかにする“権力の監視”という責務がある。だが、今回の軽減税率に関しては、ようするに業界団体が政治権力に“頭を下げて”お願いしたという構図だ。当然、政治権力はその見返りを暗に求めるし、“自主規制”という名の圧力も増す。つまるところ、新聞メディアによる政権批判や政策批判などが健全に機能しなくなるという危険性が高い。

 自分たちの既得権益のために、政権批判に手心を加えるようなことがあれば、これはまさに、国民に対する裏切り行為と言っていいだろう。

 いや、それはただの懸念ではすまない。新聞業界ではすでに、今回の軽減税率適用で、参院選までは表立った政権批判はやりづらくなった、との声が出てきている。実際、今回、大新聞が「新聞」の軽減税率適用をひた隠しにしているのは、まさに、その裏切りの自覚があるからだろう。

 たった2%の軽減税率のために、この国の新聞は、取り返しのつかないものを失ってしまったのではないか。
(田部祥太)

最終更新:2015.12.12 02:36

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