……いや、それはお前が言うな、という話である。なにせ高村副総裁は安倍首相同様、安保法制を「国民の理解が得られなくても法案を成立させねばならない」と言い切った人物。こんな発言をしておいて、よくもまあ「国民主権」を語ったものだ。だいたい、国民の理解を得なくても勝手に決める政治があるから、国民は「どうせよく変わらない」と諦めてしまうのではないのか。
しかし一方で高村副総裁は、こんな本音も洩らしている。それは、小選挙区比例代表制に話題が移った場面でのこと。高村副総裁は「(小選挙区比例代表制は)ある意味で独裁を生むシステムなのです」と指摘し、こんなことを言い出すのだ。
「以前のように選挙で個人も選べて、派閥もあったりしたほうが、党のなかでみんなが勝手なことを言えたのは確かです」
「政党本位の選挙をやると、党のお金と人事を自民党でいえば総裁が握る。ある意味では、党のなかではプチ独裁です。プチ独裁」
つまり、現在の安倍自民党は「プチ独裁」状態にある、と高村副総裁は認めているわけである。少数派閥から“安倍独裁体制”に丸乗りして生き残ってきた高村氏が言うだけに実感がこもった話であり、そもそも集団的自衛権について「我が国の憲法上許されない」と語っていたのに安倍政権の「プチ独裁」状態になって解釈を翻しただけはある。この「プチ独裁」こそが現在の政治状況と小選挙区制の問題点であるというのは、たしかに間違いない。
だが、当然ながら安倍独裁体制に呑まれた高村副総裁は、「独裁といっても、民主主義のなかの政党内独裁だから、いわば「プチ独裁」で大したことはないですよ」「(独裁国家の独裁とは違うから)小選挙区比例代表制はダメだと断ずるほどのことはないと思います」とフォローするのだ。
一応、本書は18歳に向けて書かれた政治と選挙の入門書という触れ込みのはず。なのに、「「プチ独裁」で大したことはないですよ」というのは問題を矮小化しすぎである。
と、こんな調子で、“現在の憲法はアメリカの日本弱体化政策によるもの”“憲法9条、とくに第2項は特異なもの”などと随所に自身の主張を織り交ぜてゆく高村副総裁なのだが、じつは本書、「18歳からの政治学入門」を謳うわりに「日本の政治・外交は優秀だ!」と褒め称えるばかりで、問題点がさっぱり語られない。他方、選挙における握手の仕方のコツだのドブ板選挙の効果だのといった、国民にはまったく意味のない話が延々とつづく有り様なのだ。
しかし、そんななかでもっとも大きくツッコんだのは、高村副総裁のこの一言だろう。