たしかに、たとえば居酒屋チェーンのワタミや、すき家のゼンショーHDのブラック問題についてメディアがこぞって報じていたのに比べると、とりわけセブンイレブンのブラック問題についての報道は圧倒的に少ない。というより、ほとんど皆無に近い。ワタミやゼンショーなどに比べて、セブンイレブンのブラック体質がマシということではまったくない。
今回の受賞理由にも挙げられているが、セブンイレブンでは奴隷契約のような本部有利のフランチャイズ契約に追いつめられ、加盟店オーナーの自殺も続出し、契約のしわ寄せがさらに末端にまで及びアルバイトも低待遇で酷使されている。フランチャイズシステムそのものに搾取の構造が組み込まれており、個別の案件だけでなく、本来ならセブンイレブンの企業体質そのものが問われてしかるべき問題だ。
自殺者まで出ているにもかかわらず、セブンイレブンのブラック体質が一向に改善されないのには、このメディアにおけるセブンイレブンタブーの影響も無関係ではない。
本サイトでも繰り返し指摘したが、ひとつはセブンイレブンの巨大広告費の存在が大きい。たとえば2014年2月期には524億円もの広告費が投入されるなど、マスコミとってセブンイレブンは貴重な大スポンサーだ。
また、週刊誌や新聞にとっては、コンビニはいまや書店に代わって最有力の販売チャンネル。なかでも最大手のセブンイレブンに置いてもらえるかどうかは死活問題だ。
さらに、セブンイレブンは雑誌や書籍の流通の生命線である「取り次ぎ」もおさえている。セブンイレブンの鈴木会長は大手取次会社「トーハン」出身であり、現在、トーハンの取締役も務めている。00年に発売された『鈴木敏文 経営を語る』(江口克彦/PHP研究所)では「いまではチェーン全体の書籍と雑誌の年間売上げは約一四〇〇億円。基本的にセブン‐イレブンで売っている出版物はすべてトーハン経由ですから、トーハンの売上高の約一割はセブン‐イレブンのもの」と語っているほど。00年当時2兆円だった全売上高は昨年には3.7兆円にまでなっており、セブンイレブンの影響力がより大きくなっていることは想像にかたくない。
実際、取り次ぎを使って、実力行使に出た過去もある。鈴木会長の独裁体制による社内の閉塞状況をあばいた『セブン-イレブンの正体』(古川琢也、金曜日取材班/金曜日)が取次より配本拒否にあったのだ。