また、アイドルビジネスにおいて、さらに性搾取的なものは、なんといっても握手などの「接触商法」であろう。いまやジュニアアイドルたちの「接触」は握手にとどまらない。たとえば、福岡発のアイドルグループ「青SHUN学園」の2ショットチェキ会では、小学生の児童とツイスターゲームをしたり、果ては抱っこしたりと、濃厚な接触が行われ、ネットでその是非について議論が交わされたこともある。
このような事情を鑑みれば、あまりにも「グレー」な性的搾取の実情を我が国が野放しにし過ぎていることがよく分かるだろう。今回、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏がこのような記者会見を行うにいたった背景について、モーリー・ロバートソン氏は「週刊プレイボーイ」(集英社)15年11月23日号のなかでこのように綴っている。
〈これに対して「日本のことがわかっていない」と無視したり、「白人の価値観を押しつけるな」と憤っても事態は悪化するばかり。なぜ日本がことさら問題視されるのか、そもそもの事情を知る必要があります。
近年、世界中で子供の人身売買、児童労働、児童買春が大きな問題となっています。昔から貧しい国では子供の人身売買が行われていましたが、それは基本的には国境の中での出来事でした。ところが、世界中がアメリカとソ連の“陣営”に分かれていた冷戦が終わると、核戦争という大きな危機が去った一方、あちこちで経済混乱や無秩序な紛争が頻発。底なしの貧困が広がるとともに、人身売買のルートも国境を難なく越えるようになります。アフリカ、南アジア、ヨーロッパの旧ユーゴ諸国……といった諸地域で、多くの子供たちが組織的な児童労働や児童買春の被害者となり、虐待、監禁、あるいは殺人という恐怖と隣り合わせで生きているのです。
それに対して「子供を救え!」と声を上げている側から見れば、日本は先進国にもかかわらず、この問題に関してあまりにも無関心。それどころか、子供を性の対象にしたような“コンテンツ”があふれています。日本人から見れば、なかには完全にアウトなものもあれば、グレーなもの、「まぁOKだろう」というものまでいろいろでしょうが、外からこういったピースをひとつずつ合わせていくと、日本全体が児童買春天国に見えてしまうというわけです〉
恣意的な運用に対する危惧が叫ばれつつも、本年7月からは児童ポルノの単純所持が禁止された。このような動きは、諸外国に足並みを揃えるという意味合いもあるものと思われるが、そのような法律をつくったとしても、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏が会見で示唆したような、「こういったビジネスというのは、非常にお金の儲かるビジネスになっているわけで、一見したところ社会そのものが容認している、かつ、寛容の精神で見ているように見受けられます」という状況を変えない限り、今後もこのような騒動は起こり続けるだろう。
JKビジネスにせよ、アイドル産業にせよ、性的な児童虐待につながりかねない「グレーゾーン」を「コンテンツ化」する我々の心性を見直すべき時がきている。「女子学生の13%が援交」発言は撤回されたとしても、我が国が、児童ポルノグレーゾーン大国なのは間違いのない事実なのだから。
(田中 教)
最終更新:2016.08.05 06:43