しかし、放送大学の単位認定試験がはたして放送法の対象になるのか。しかも、日本国憲法23条では「学問の自由」が保障されている。「学問の自由」を、放送法を盾にして侵してしまうのは、大学としては自殺行為。それこそ問題文にある「言論や報道に対する統制を強め」「表現の自由を抑圧し情報をコントロールする」を地で行く対応ではないか。
だが、こうした「学問の自由の侵害」が行われているのは放送大学だけではない。実は、今、日本の大学は全体的に、教員の政治的発言に対する圧力が高まっているのだという。
「直接、大学当局が安保法制に反対する教員を抑えこむために『教員の政治的活動、政治的発言を禁じる』というようなハードな弾圧を行う、というのは現状ではありません。しかし、ソフトな政治的弾圧は蔓延しています」
こう話すのは都内のある私立大学の教員だ。
「現在の大学は、ネトウヨ的なクレーマーに非常に弱い。ネトウヨ的な学生は、実際には全体の数パーセントです。しかしこれらのクレームが、大学の右派教員に反体制的な教員を弾圧する根拠を与えるのです。教員の授業での発言が偏向している、という抗議が授業後に大学に来るということもあります。これは教員本人に直接言うのではなく、大学当局にクレームをつけるのです」
「学問の自由」の精神に照らせば、疑問は教員に直接ぶつけるべきであろうが、当局にクレームがいってしまうことで、教員の萎縮効果はより大きなものとなる。
また、大学によっては、右派教員による政治的ストーキングなどもあるという。
「クレームをテコとして、右派教員が教員全体を政治的に抑え付けようとする構図があります。(安保法案に反対するような)教員に対して、あら探しのためにストーカー的に嫌がらせをします。その教員が授業をしているところに聞き耳を立て、授業が早く終わると『なぜ授業が早く終わったか』などと文句をつけるのです。理由は単に授業を早く始めたから早く終わるだけなんですがね」