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ネトウヨのネタ本『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデタラメ! 唯一の証言者は父親、妻名義の本を夫の名で再出版

 だが、この本がデタラメなのは内容だけではない。実は『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』には、内容がほぼ同一の本が存在しているのだ。それは工藤美代子氏が2009年に発表した『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』(産経新聞社)だ。

 工藤美代子氏といえば、皇室評伝や、山本五十六伝、石原慎太郎論などを手掛けるノンフィクション作家だが、かつて「新しい歴史教科書をつくる会」の副会長を務めたこともある保守論客。また、最近では、三笠宮家の母娘対立で、娘の彬子女王側に立ち、「週刊新潮」(新潮社)に信子妃を誹謗中傷する記事を発表したことで話題になった。

 その工藤氏が6年前に書いた本と、昨年、出版され、今、ネトウヨのヘイトの元ネタになっている本がそっくりなのである。

 しかもこのふたつの本、似ているというレベルではなく、わずかな箇所を除けば、一字一句同じと言っていいものだ。

 では、加藤氏が工藤氏の本を盗作したのか? というとそうではない。実は、『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』の加藤康男氏は、工藤美代子氏の夫なのである。つまり、工藤氏は先述した“唯一の証拠”である証言をした池田恒雄氏の娘というわけだ。

 加藤康男氏は自分名義の「なかった本」の「あとがき」で、「これまで著者名は筆者の妻・工藤美代子としてきたが、取材・執筆を共同で行ってきた関係から、ワックBUNKO化に際して大幅に加筆、修正し、著者名を加藤としたことをお断りしておきたい」とだけ書いているが、いや、これは簡単に流していい問題ではないだろう。

 そもそも、「取材・執筆を共同で行ってきた」のであれば、前の本で「工藤美代子」名しかないのはおかしいし、新版で修正するにあたっては、夫婦の共著とするのが筋のはずだ。

 それが、ワック版では「加藤康男」の名前しかなく、「工藤美代子」が消えている。これは、ノンフィクション作家・工藤美代子氏が発表した『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』はネームバリューのある工藤氏が名前を貸しただけで、実際にはゴーストの夫によって書かれたものだった、そうとしか解釈できないだろう。

 あるいは、今回、別の執筆者名で出すことで、新しい本であることを装って売ろうとしたのだろうか。

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