さらに問題なのは、そもそも火山の影響評価では審査基準を達成することが不可能なことだ。新規制基準火山影響評価ガイドでは、火山活動のモニタリングと火山活動の兆候は把握時の対処を適切に定めることが条件とされている。つまり、モニタリングで噴火の兆候を把握できることが前提条件とされており、その条件で、川内原発の火山審査は合格した。
しかし、火山学者は火山の兆候把握は不可能だと言っているのだ。それも一人、二人の火山学者だけが言っているわけではない。「我々は巨大噴火を観測したことがない。どのくらいの前兆現象が起きるか誰もしらない」と語った火山予知連絡会の藤井敏嗣会長はじめ、ほとんどの火山学者が否定しているのだ。これは安保法制での憲法学者と同じ状況である。
それならば審査合格を見直して、まずガイドラインを修正せねばならない。それが「科学」というものだ。火山学会も、このガイドラインの修正を要求した。
しかし規制委はこれも無視した。いや、無視しただけではなく田中委員長は、「そんな巨大噴火が起きれば、九州が全滅する。原発の問題ではない」と言い放った。これは子供でもインチキだと分かる詭弁だろう。巨大噴火でも重大な災害であるのに、それに複合して原子力災害まで同時に起きてもいいというのか。更に言えば、規制委は原発の安全規制のために存在している。それならば、粛々と巨大噴火に対する原発の立地条件を審査するのが職務である。
もし田中委員長の主張通りに巨大噴火を想定するのが無意味なら、それこそガイドラインを修正し、「巨大噴火は検討しない」と書かねばならない。田中委員長のゴマカシ強弁はとても科学者の姿勢とは思えない。
■老朽化による1号機耐震審査をしないまま認可
川内原発の審査については他にも多くの問題があるが、最近も唖然とするような事態が起きている。
運転から30年経過した原発は、新規制基準の適合性審査とは別に、規制委の認可を得なくてはならないと原子炉等規制法で規定されている。川内原発1号機も昨年7月に30年を迎えていたが、九州電力の申請が遅れ、この7月時点でも審査は終わっていなかった。
ところが、規制庁、規制委は川内原発については、この老朽化についての審査・認可なしに再稼動を認めようとしていたのだ。それが可能なら、30年経過してもいつまでも原発を稼働できることになる。