しかし、ホリエモンのような“安保デモ行く奴は情弱認定”派も、太田のような“デモなんかやっても無駄”派も、根底にあるのは同じ。それは「他人事」という思想だ。
そもそも、ホリエモンは奇しくも太田と同じく瀬戸内と対談した『死ぬってどういうことですか? 今を生きるための9の対論』(角川学芸出版)のなかで、自身の戦争体験をもとに「だって安倍さんが言ってること、してること見たら、いかにも戦争をこれからしよう! って感じじゃないですか?」と話す瀬戸内に対し、「いやいや。それは言いすぎじゃないですか? (安倍首相は戦争を)別にしたくはないでしょ」と反論。中国との経済的結びつきを論拠に「そりゃあ絶対にないですよ」と断言している。
だが、ホリエモンのこの見立て自体が間違っている。本サイトでは何度も指摘しているように、安倍首相は「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの。だから、やる(法案を通す)と言ったらやる」とオフレコ懇談会で記者たちを前に豪語。過去に行われた対談でも“尖閣で日本人が命をかける必要がある”と話している。経済的な“国益”に反しても、安保法制を通して中国と交戦する──それが安倍首相の目的であることは明白だ。
でも、じつはホリエモンの本音は、戦争になろうがならまいが、どっちでもいいのだ。事実、瀬戸内との対談では「僕は、(中略)戦争が起こったら、真っ先に逃げますよ。当たり前ですよ」「第三国に逃げればいいじゃないですか」と答え、逃げられない人はどうするの?という瀬戸内の問いかけに、「行かれない人はしょうがないんじゃないですか?」と回答している。
逃げる金のない奴は死ねばいい。こうした考えをもっている人間にとっては、そりゃあ安保法制なんて〈正直どっちでもいい〉はずである。だが、“命は金で買える”と思っているような人間が、デモを批判する資格などない。逃げるような金なんてないし、たとえホリエモンのような銭ゲバでも誰ひとり戦争で殺してはいけないと考えている人びとが、いま、声をあげているのだから。
さらに、太田の“デモなんかやっても無駄”という意見も、ホリエモンと同様に「他人事」思想から発せられている。