これほどヤバい動きを、なぜマスメディアはきちんと報じないのか。青木氏はこう話す。
「ひとつには、安保法制の問題を報道するのに追われていて盗聴法のことまでフォローできていないことがあるんでしょう。また、警察や検察はマスメディアにとって事件報道の重要なネタ元なので、真正面から批判しづらいということも影響しているかもしれません。政治家にしたって、警察や検察に睨まれると選挙違反なんかで反撃されかねませんからね」
改正案は現在、衆院法務委員会で審議中だ。一方、6月末には対象犯罪の拡大などは認めないとする民主党独自の対案が明らかにされたが、巨大与党の政治情勢下、改正案がこのまま成立してしまうおそれが強い。もはや抵抗の余地は残されていないのか。
前出の山下弁護士は、今からでも可能な手段として監視機関の設置を挙げる。
「傍受されたかどうかわからなくても、せめて裁判所に保管されている原記録を、事後的に定期的に確かめる第三者機関を作り、法が正しく運用されているかどうか市民がきちんと監視することが必要です。機関の設置は法案と別に進められますので、そのように法改正を求めていくのがいいと思います」
最低限、それくらいの措置を講じなければ、警察の盗聴が「やりたい放題」になってしまう。繰り返すが、誰だってターゲットとされかねないのだ。法律が成立してしまえば、安保法案に異議を唱えるにもさらに不利な環境が形成されることになる。どうか国会での審議とともに、今後の法の運用に注意を払っていただきたい。
(取材・松岡瑛理/構成・編集部)
最終更新:2015.07.14 08:29