それだけではない。発起人には、安倍首相の小学生時代の家庭教師である本田勝彦・JT顧問や、前述の「さくら会」メンバーの木村恵司・三菱地所代表取締役会長、安倍首相とゴルフ仲間の日枝久・フジテレビジョン代表取締役会長、安倍首相を「全国で一番近い政治家」と語る地元山口の有力な支援者である福田浩一・山口銀行代表取締役頭取……と、ほとんど“安倍首相応援団”というべき面子が揃っている。
しかし、このプロジェクトが安倍首相の肝いりであることを物語っているのは、なんといっても故・加藤六月元農水相の長女で、都市経済評論家の加藤康子氏の存在だろう。
加藤氏は今月2日、内閣参与となった女性だが、前述の「一般財団法人産業遺産国民会議」の専務理事で、「明治産業遺産」を世界遺産にと10年間にわたって根回しを行ってきた。今回の世界遺産登録の“陰の立役者”と呼ばれている女性なのだが、この康子氏と安倍首相は“幼なじみ”で、家族同然の深い関係にあるのだ。
康子氏の父・六月氏は安倍首相の父・晋太郎氏の四天王の筆頭で、康子氏の母は安倍首相の母・洋子氏と“姉妹”のように親しく、昔から家族ぐるみの付き合いをしていたという。
また、康子氏は安倍首相の側近中の側近とも言われる議員・加藤勝信氏の元婚約者で、現在は勝信氏が康子氏の妹と結婚したため、義理の姉にあたる。この勝信氏は第二次安倍内閣で内閣官房副長官を務め、例の「文化芸術懇話会」の発足にも参画。先日の百田発言を「拝聴に値する」とコメントした人物だが、勝信氏の官房副長官への登用には、勝信氏の義母と親しい安倍首相の母、洋子氏の人事だったと言われている。
このような“華麗なる一族”ごっこで内閣の人事が決まっていることには辟易とするが、問題は今回の「明治産業遺産」も、そうしたなかでかたちとなっていったことだ。
事実、まだ暫定リスト入りしたばかりの09年に、安倍首相の妻である昭恵夫人もブログで康子氏を友だちと紹介し、シンポジウムに参加するなど世界遺産登録を応援。“家族ぐるみ”で後押ししていた。