『自衛隊 この国営ブラック企業 隊内からの辞めたい死にたいという悲鳴』(小西誠/社会批評社)
安倍政権は最後まで、安全保障法制(新安保法制)のリスクを隠したまま逃げ通すつもりらしい。
一昨日のNHK『日曜討論』で、自民党の岩屋毅・安全保障調査会副会長が、新安保法制に伴う自衛隊員の安全上のリスクについて、「高まる可能性があるのは事実だ」と認める発言をした。にもかかわらず、昨日午前に行われた衆院平和安全法制特別委員会では中谷元防衛相が「リスクは高まらない」とこれを否定。これまでどおり“自衛隊員のリスク増加”を認めてこなかった安倍首相をはじめとする政府の認識を踏襲したかたちだ。
しかし、安倍首相がどう言い繕おうと、自衛隊員のリスクは増大する。戦闘に巻き込まれる可能性はもちろん、もうひとつのリスクもある。
それは自殺というリスクだ。先月27日の国会でも、イラク特別措置法で海外派遣された自衛隊員のうち、帰国後に自殺した者が今年3月末時点で54人もいたことが公表された。新安保法制では、自衛隊による友軍後方支援の範囲がこれまでの「非戦闘地域」以外に拡大される見込みで、ますます自殺者は増加の一途をたどるだろう。
おそらく集団的自衛権の容認と新安保法制の成立で、自衛隊員のなかには退職希望者が続出しそうだが、実は、自衛隊というのはそう簡単に辞めることができない組織なのだ。
あまり知られていないが、自衛隊法第40条にはこういう規定がある。
〈第31条第1項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。〉
これはつまり、上官が任務遂行に支障をもたらすと考えたときは、隊員の退職申し出を拒否することができるという規定だ。また、任期自衛隊員の場合は入隊時に、「任期中に退職しない」という誓約書を書かされるという。
もちろん、憲法22条の職業選択の自由は自衛隊員にも保障されており、原理的には本人が申し出れば、退職は自由だ。しかし、現実には、この自衛隊法第40条や誓約書をタテに、執拗な引き留めにあうのだという。
昨年出版された『自衛隊 この国営ブラック企業 隊内からの辞めたい死にたいという悲鳴』(小西誠/社会批評社)には、辞めたいのに辞めることのできない自衛隊員の生の声がいくつか収録されている。