吉井議員はこうした回答を予測していたのか、次に「現実には、自家発電機(ディーゼル発電機)の事故で原子炉が停止するなど、バックアップ機能が働かない原発事故があったのではないか。」とたたみかける。
しかし、これについても、安倍首相は「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない。」と一蹴。
これに対して、吉井議員はスウェーデンのフォルスマルク原発で、4系列あったバックアップ電源のうち2系列が事故にあって機能しなくなった事実を指摘。「日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。仮に、フォルクスマルク原発1号事故と同じように、二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか。」と糾した。
すると、安倍首相はこの質問に対して、こう言い切ったのである。
「我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない。」
吉井議員が問題にしているのはバックアップ電源の数のことであり、原子炉の設計とは関係ない。実際、福島原発はバックアップ電源が全部ダメになって、あの深刻な事故が起きた。それを安倍首相は「設計が違うから、同様の事態が発生するとは考えられない」とデタラメを強弁していたのだ。
そして、吉井議員がこの非常用電源喪失に関する調査や対策強化を求めたことに対しても、安倍首相は「地震、津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安全性については、(中略)経済産業省が審査し、その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり、御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。」と、現状で十分との認識を示したのだ。
重ね重ね言うが、福島原発が世界を震撼させるような重大な事故を起こした最大の原因は、バックアップ電源の喪失である。もし、このときに安倍首相がバックアップ電源の検証をして、海外並みに4系列などに増やす対策を講じていたら、福島原発事故は起きなかったかもしれないのだ。
だが、安倍首相はそれを拒否し、事故を未然に防ぐ最大のチャンスを無視した。これは明らかに不作為の違法行為であり、本来なら、刑事責任さえ問われかねない犯罪行為だ。
ところが、安倍首相はこんな重大な罪を犯しながら、反省する素振りも謝罪する様子もない。それどころか、原発事故の直後から、海水注入中止命令などのデマをでっちあげて菅直人首相を攻撃。その罪を民主党にすべておっかぶせ続けてきた。
その厚顔ぶりに唖然とさせられるが、それにしても、なぜ安倍首相はこれまでこの無責任デタラメ答弁の問題を追及されないまま、責任を取らずに逃げおおせてきたのか。
この背景には、いつものメディアへの恫喝があった。そのへんの事情は後編でお届けしよう。
(エンジョウトオル)
【後編へ続く】
最終更新:2015.03.12 12:06