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後藤さん殺害では終わらない! 米国と安倍政権が踏み込む泥沼の対イスラム国戦争

 米オバマ政権は14年6月に「イスラム国」と戦う“穏健な武装勢力”を支援するため5億ドルの資金提供を決めた。“穏健な武装勢力”とは、具体的にはシリアの反政府勢力「自由シリア軍」のことだ。アメリカはこれまでもシリアのアサド政権打倒のため、反政府勢力に武器、弾薬、資金を与えて支援してきた。ところが、その豊富な資金と武器の一部がなんと「イスラム国」にも流れていたのだ。ルートはいろいろあって、武器の供与を受けていた組織が丸ごと「イスラム国」に吸収されてしまったり、戦利品として奪われたり、あるいはイラクのシーア派主体の政府軍から米国製武器がブラックマーケットに流れることもあったという。アメリカがアテにしていた「自由シリア軍」の兵士たちも腐敗していて、貰った兵器を「イスラム国」に売却して現金を手にする者も続出した。

 要は、内戦下のイラク、シリアはぐちゃぐちゃで、“穏健な武装勢力”といっても、いつどっちに寝返るかわからない連中ばかりなのだ。「イスラム国」の手先もいれば、アルカイダにつながるテロリストも紛れ込んでいる。そんなところへアメリカは大量の武器・弾薬を投入し、結果として「イスラム国」の軍事力強化に手を貸してしまったわけだ。

 実は、アメリカはこれと同じ過ちを何度も何度も繰り返していた。

 なぜ、こんなことが続くのか。米オバマ政権はもともとアフガニスタン、イラクへと米軍の海外展開を進めたブッシュ前政権を徹底批判し、「イラク戦争にけじめをつける」と宣言してホワイトハウス入りしたはずだ。就任から3年かけてようやくイラクからの撤兵にこぎつけ、アフガニスタンからの引き上げも数年中には完了する予定となった。これが計画通り実行されると当然、米政府の国防予算が削られ、軍産複合体の利権が毀損される。困ったことにアメリカには、これを全力をあげて阻止しようとする勢力が存在しているのである。

 米議会は15年度の軍事予算とし586億ドルを承認する予定だったが、これは14年度予算から200億ドル余りの減額になる。しかし「イスラム国」の台頭で国防費の増額が検討され、米軍需産業に再び“好況”が訪れつつあるという。米政府がシリア空爆を開始した3日後にはレイセオン社が47基の巡航ミサイル(2億5000億ドル相当)を受注した。ボーイング社が製造するアパッチヘリがバグダッド郊外に新たに配備されることになり、このヘリにはロッキード・マーティン社製のヘルファイア・ミサイルが搭載されているといった具合だ。こうして軍需産業の生産ラインが動き出せばブルーワーカーたちの新たな雇用も創出される。アメリカの経済はいまや戦争なしでは成り立たないようになっている。

 03年のアメリカのイラク侵攻で最大の利益をあげたのは、チェイニー元副大統領がCEO(経営最高責任者)を務めていたハリバートン社だったといわれている。同社はおよそ400億ドルの巨利をイラク戦争でむさぼったという。米軍需産業はいまや世界の武器市場の75%を占めていて、中東はその最大マーケットになっている。これこそがアメリカが外国での軍事介入をやめられない実は本当の理由なのだと、前掲書の著者、宮田氏は指摘している。

 安倍政権は、そんなアメリカの戦争に集団的自衛権を使って加担しようとしているのだ。

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