日本の宗教的な非公開区域なら、他に興味深い場所が幾らでもある。秘密性を重んじる日本古来の宗教観が、数々の「禁足地」を生んでいるからだ。
例えば福岡県・玄界灘に浮かぶ「沖ノ島」。許可を得れば参拝できるが、女性は完全入島禁止だ。あるいは沖縄県・久高島の「クボー御嶽」。こちらは女性のみ参拝可能だったが、近年マナーの悪化により島民ですら立入禁止となった。
変わりどころを挙げれば、千葉県「八幡の藪知らず」。市街地の国道沿いにある小さな空き地にも関わらず、「入ったら出てこられない」といった怪奇伝説が囁かれている。また個人的には、兵庫にある、祭事以外は立入禁止の某巨大寺院(新興宗教系)を紹介してもらいたかったが……。
本の内容について話を戻そう。少し意地悪を言ってしまったが、本書に取り上げられたタブースポットのほとんどが強烈。よほどの運とコネと努力が無ければ、たどり着けない場所ばかりだ。
「こんなところまで実際に取材してきたのか! 凄すぎる!」
と興奮ぎみにページをめくってみたのだが……一点、注意しなければならないことがある。
実はこの本、筆者が現地に出向いてはいないのだ。写真も政府・報道資料から転載したものという、情報収集によるデータブックであって、ルポルタージュのつもりで買うと痛い目を見てしまう。まあ、「絶対に行けない」場所なのだから、筆者も訪れていなければ、読者も足を運べないのは仕方ないかもしれない。ルポでもガイドブックでもなく、あくまで好奇心を刺激するための本と割り切るべきだろう。それにしても「250点の写真・地図で、立ち入り禁止エリアに潜入!」という帯文は、ちょっと誤解を招きやすい表現だと思うが……。
とはいえ、読み物&データブックとして「使える」本なのは確か。そもそも原書にしてからがペーパーバックだが、それにしてはネタ探しと情報の深堀りをキチンと行っている良書だろう。少なくとも、巷にあふれる寄せ集めバイラルメディア本(なんちゃらな絶景、とか)より遙かに優れている。
また日本版では、「伊勢神宮」の次にあった「福島第一原発」の項が除外されての刊行となっている。原題「100 PLACES YOU WILL NEVER VISIT」が「非公開区域99」と1スポット少なくなっている理由である。事情を配慮しての措置なのだろうが、どのような扱われ方をしているか、原書でも確認しておきたいところだ。
(吉田悠軌)
最終更新:2018.10.18 04:59