これを最初に報じた「FLASH」(光文社)08年12年16日号の取材に対して、麻生甥は「役員の立場において偏ったコンテンツ内容を指示、依頼したこともありません」と答えている。だが、今や巨大メディアとなったニコ動に、財界・政界の雄である麻生一族が関わっているという事実は“それ以上でもそれ以下でもない”と果たして断言できるだろうか?
ニコ動はその性質上、意見が偏りやすいメディアだ。ご存知のとおり、このサイトにはリアルタイムコメント機能というものがあり、ときに画面は罵詈雑言で溢れんばかりになる。そして、この“コメントの嵐”が作り出す空気を拒絶するユーザーは、その動画にあえて肯定的なコメントを残すことなくスクリーンを閉じる。ゆえに、実際にはコメントをしている人数は少数でも、あるコンテンツが多数の否定的なコメントで埋め尽くされれば、その動画に触れる一般の視聴者にも、露骨にネガティブなイメージをあたえるのである。
そして、前回説明したとおり、このコメント投稿を担っているのが自民党のネット別動部隊・J-NSCなのだ。実際、ネトサポによる“暴言工作”を自民党議員自らが先導していたことも判明している。東京新聞が報じたところによると、13年6月28日にニコ動で中継された党首討論で、当時社民党党首だった福島瑞穂が発言した際に「黙れ、ばばあ!」とスマートフォンで書き込んだ議員がいたという。
その人物とは平井卓也衆議院議員。自民党ネットメディア局長であり、他ならぬJ-NSCの代表である。平井議員は日本維新の会(当時)共同代表・橋下徹の討論会欠席が伝えられたときにも「橋下、逃亡か?」と書き込み、安倍首相の発言に際しては「あべぴょん、がんばれ」とコメントを残したとされている。
J-NSC代表がじきじきにこのようなカキコミをしているのだから、ネトサポの真の目的が何かは想像するまでもない。
もっとも、ネトサポがいくら暴言やヘイトスピーチを垂れ流そうが、自民党はあくまで「一部のボランティアが暴走しているだけで、党は抑止を勧告している」というポーズを崩さないだろう。だが、ネトサポの活動は、ニコ動での国会中継や政治系の動画でも発揮され、印象操作に一役買っている。ゆえにニコ動での自民党人気は極端なものとなっているというのが通説だ。安倍首相がニコ動内で党首討論会を望むのには理由があったのである。今や在特会の公式チャンネルまでもスタートさせたニコ動は、“安倍ちゃん人気”を継続させようとする意図から、ヘイトスピーチを野放しにしていると受け取られてもしかたがないだろう。
また、同じく13年参院選の直前には、自民党はネット上の有権者の声などを分析するチームを設立し、国内IT企業と契約して、誹謗中傷やデマ、あらし行為などを監視する「ソーシャルメディア投稿監視サービス」を導入している。これは、ツイッターやブログのカキコミを常に監視下に置き、不都合ならば削除を要請しているということを意味する。すなわち、ネット世論工作と平行して、ネット言論の監視・統制まで行われているのである。