「本当の愛を知る物語」を上梓した百田尚樹氏(「やしきたかじんメモリアルサイト」より)
「あの人、(頭)大丈夫かな」
『殉愛』(幻冬舎)をめぐって疑惑が噴出するなか、ネトウヨ作家の百田尚樹が宮崎駿監督のことを、こんなふうに斬って捨てたと大きな話題になっている。
15日放送の『たかじんNOマネー BLACK』(テレビ大阪)で「宮崎さんは私の原作も読んでませんし、映画も見てませんからね」とまくしたて、あげく「あの人」と言いながら頭を右手で指して、「○○大丈夫かなぁ、と思いまして」と小バカに。「○○」の部分は、オンエア上はピー音が入っていた。さらに宮崎の映画『風立ちぬ』について、「あれウソばっかりなんですね」と激しく批判したのだ。そして、「私は徹底して戦争を、特攻を否定している」「ぼくは単に愛国者なんです。ぼくが嫌いなのは、反日と売国奴なんです」などの主張を繰り広げた。
実は、ことの発端は、本サイトのエンジョウトオルの記事だった。昨年9月、雑誌「Cut」(ロッキング・オン)のインタビューで宮崎駿が具体名こそ挙げてはいないが、明らかに『永遠の0』について痛烈に批判していたことを報じた。
「今、零戦の映画企画があるらしいですけど、それは嘘八百を書いた架空戦記を基にして、零戦の物語をつくろうとしてるんです。神話の捏造をまだ続けようとしている。『零戦で誇りを持とう』とかね。それが僕は頭にきてたんです」
「相変わらずバカがいっぱい出てきて、零戦がどうのこうのって幻影を撒き散らしたりね。戦艦大和もそうです。負けた戦争なのに」
こうした宮崎の批判が百田の言うように「頭おかしい」ものかどうか、以下に再録するので一読していただきたい。
▽宮崎駿が百田尚樹『永遠の0』を「嘘八百」「神話捏造」と酷評
それにしても今回驚いたのは、百田が宮崎駿の『風立ちぬ』を「あれウソばっかり」などと激しく批判したことだ。といっても、自分と主張のちがう政治家も、自作を批判する読者も“人間のクズ”呼ばわりする百田センセイのこと、口の悪さに今さら驚いたわけではない。
驚きなのは、いつのまにか百田が『風立ちぬ』に対する評価を180度変えてしまっていることだ。百田がツイッターで反論しバトルと話題になっていたとの記事もあったが、それは間違いだ。当時百田は『風立ちぬ』のことも宮崎監督のこともまったく批判していない。『風立ちぬ』については、むしろ評価していた。
まず試写で鑑賞した際、「先日、アニメ『風立ちぬ』の試写を観た。ラストで零戦が現れたとき、思わず声が出てしまった。そのあとの主人公のセリフに涙が出た。素晴らしいアニメだった」などと同作を大絶賛していたのである。
では自分が批判された逆恨みから批判し返したのかといえば、実はそうでもない。エンジョウトオルの記事で宮崎による批判を知ってからも、百田は『風立ちぬ』に対する評価は変えなかった。