『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』(幻冬舎)
近年、教師によるわいせつ事件が世間を騒がせている。9月下旬には、宮崎県でともに教師である夫婦が公園へ行き、遊んでいた女児の前で妻が下半身を露出し、夫がその一部始終をビデオ撮影するというおぞましい事件が発生した。同じく9月には、部活動中の女生徒にわいせつな行為をしたとして、茨城県の公立中学に勤める男性教諭が逮捕された。この教師は過去3度も同様の事件で逮捕されており、公判中だったという。
ほかにも児童買春や痴漢など、教師による犯行が日々ニュースになり、恐ろしいことに、私たちはいつの間にかこの手の事件を聞き慣れた状態に陥っているのではないだろうか。増え続けるわいせつ事件を予防するために、どういった要因や背景があるか、本格的に検証する時期が来ている。そこで今回は、教師による生徒へのセクハラ(=スクールセクハラ)の加害者・被害者を取材した、共同通信社記者の池谷孝司氏による『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』(幻冬舎)から、スクールハラスメントの要因を探ってみたい。
まず第一の要因は、教師側が「特別権力関係」を意識していないことだ。本書に出てくる、25年のキャリアを持つ元教師は、教え子だった6年生の女児にホテルでわいせつ行為をして逮捕され、執行猶予付きの実刑判決が下っている。驚くことに、彼は「好きになった相手が十歳でした」と話し、スクールセクハラではなく、恋愛だったと主張したのだ。ロリコン趣味を疑われたが、彼の自宅からはその手のDVDは押収されず。シングルマザーの家庭で育つ女児のほうから元教師に手紙や電話をしていたため、彼は女児が自分に好意を持っていると勘違いし、暴走したのだという。女児はキスを嫌がったり、体を触ることを拒否していたのだが、元教師に怒られることを恐れ、言うことに従っていたという。
また、担任教師に半ば強引にホテルに連れていかれ、強姦まがいの行為をされた女子高生も、内申書や日々の学校生活における嫌がらせに怯え、言われるままに4〜5回、教師との密会を重ねることになる。
どちらの場合も教師側は「恋愛」と主張しているのだが、生徒側からすれば日々の学校生活を“人質”にされた格好だ。しかし、教師側は常に年下である生徒と向き合っているために、自分の持っている権力や生徒が嫌がっていることに気づかないことが多いという。もちろん権力を理解したうえで関係を無理強いするケースもあるが、自分の権力に対する無自覚さは、教師という独特な職務がいっそう拍車をかけているのかもしれない。