いや福島県だけでなく、周辺の茨城県や群馬県でも11年の急性心筋梗塞死亡率は“顕著な“上昇が見られ、また山形県、栃木県、埼玉県、千葉県でも右肩上がりに増え続けているという。
「セシウムは体内に取り込まれた後、筋肉に集まりやすい性質があるとされる。そして心臓は、そんな筋肉(心筋)の“塊“のような臓器である」
もちろんこの記事では、セシウム汚染と急性心筋梗塞多発の因果関係をはっきり断定したものではない。しかしセシウム汚染地域では急性心筋梗塞が多発していることは確かな“事実“だ。
チェルノブイリ事故を見ても、健康被害は年月を追って様々に増加していく。
子どもの甲状腺がん、死産やダウン症の増加、糖尿病、気管支炎、呼吸器系疾患、貧血、白血病——。これらは現在まで放射線との因果関係がはっきりはしていないものも多いが、だからこそ今後の日本において、長期的調査や対策が必要といえよう。
そしてその根源である“放射能汚染”もまた、現在も“進行中”だ。
「フライデー」(9月12日号)では福島県の放射線量の独自調査を行っているのだが、「ほぼ全ての場所で除染の基準となる0.23マイクロシーベルトをはるかに超えた」という。そして、もっとも高かった南相馬市の病院駐車場では10.14マイクロシーベルトという恐るべき数字が記録されたという。
「そこに1年間いると、ICRP(国際放射線防護委員会)が安全基準とする年間1ミリシーベルトの44倍もの被爆をすることになる」
近隣住人によると、この場所は「予算がない」ため除染を行っていなのだという。他にも子どもたちが通う福島市東部地区の小学校近くで10.14マイクロシーベルトが計測されている。長崎大学工学部の小川進教授はこうした状況に「完全な除染は不可能」と断じている。除染などできないのに莫大な予算をかけ、利権として“除染行為”を行い続けているだけなのだ。
ところが、新聞やテレビはこうした実態をほとんど報道しようとしない。「美味しんぼ」の問題のにはあれだけ騒ぎ立てるのに、原発そのものの問題、そして健康被害については触れようともしない。
これから先、ほんとうに深刻な健康被害が発生したとしても、国や東京電力はおそらく原発事故との因果関係を認めようとはしないだろう。そして、進まぬ除染、効果のない凍土壁、海に流出し続ける汚染水――さまざまな問題がなんの解決もされないまま放置され続ける。
この国の国民は結局、政府、電力会社、マスコミの原発トライアングルの中で永遠に騙され続けるしかないのだろうか。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.01.19 05:52