番組のHPでは“消えることがない事故原因・救出活動への疑問”と触れられているこれらの問題。だが、放送ではこの“救出活動の疑問”には焦点が当たらず、代わりにというべきか、当時最前線で捜索に当たった自衛隊員が登場。生存者との感動秘話や自衛隊員の活躍がいささか英雄仕立てに仕上げられていた。
「当時、事故現場からの生存者の救出はフジテレビだけが生中継できました。その映像をより効果的に使うためにも、自衛隊員の協力と証言が必要だったのかもしれません」(同)
もちろん、現場の自衛官は必死に仕事をしただろうし、その活躍は尊いものだろう。しかし、生存者の証言から、墜落直後には他にも多くの生存者がいたことも明らかになっている。救助活動がより早く行われていれば、生存者が増えた可能性は極めて高いのだ。
事故の悲劇を繰り返さないためにも、事実の検証と責任の追及を徹底的にやるのがジャーナリズムの使命のはずだ。その視点は、福島で起きた原発事故の検証にもつながるだろう。
“事故を風化させてはならない”という作り手側の思いは伝わる番組だった。だが、それならば自衛隊に取材協力をお願いするより、もっと大事なものがあるのではないのだろうか。
(田部祥太)
最終更新:2014.09.16 07:58