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あのワープア芥川賞作家が、真夜中の天下一品で…!

『ずるずる、ラーメン』(河出書房新社)

 ずるずる……。
 なにやら麺をすする音がする。

 蕎麦だろうか? いや、蕎麦は「ず、ずーーーっ」だ。では、うどんか? いや、うどんは「ちゅるちゅる」だろう。じゃあ、パスタ? いやいや、フォークに巻いて口に運ぶから、すする音はしないはず(お行儀の悪い人は別だが)。

「ずるずる」は、ラーメンをすする音だ。特に中華そばの、あるいは即席麺特有の縮れ麺。あの縮れ部分が唇を通過していく時に出る音などは、もっとも「ずるずる」のイメージだろう。

 さて、そんな即座にラーメンを想起させるオノマトペをタイトルに冠した『ずるずる、ラーメン』(河出書房新社)は、ラーメンにまつわる随筆を32篇収録したアンソロジーである。これは、先だって同社がスタートさせた「おいしい文藝」シリーズの第2弾に当たる。

 まずはメニュー(目次)を見てみよう。

 マンガ『孤独のグルメ』(扶桑社)でおなじみ、東京は三鷹のラーメン店をひたすら観察し続けた『孤独の中華そば「江ぐち」』(牧野出版)などの著書もある久住昌之や、長年ラーメンを俎上に上げ続ける食エッセイの大家・東海林さだおなどはもちろんのこと、池上永一、江國香織、町田康などの小説家陣、さらにはラーメン好きのキャラクター「小池さん」の生みの親である漫画家、藤子・F・不二雄/藤子不二雄Aまで登場! 豪華絢爛なメンツは、さしずめ具材全部のせラーメンといったところか。

 頭からお尻までラーメン話づくしの本書を読んでいると、「我々は、なぜこうもラーメンという食べ物に惹きつけられ、その1杯1杯に一喜一憂しているのだろうか?」という、超身近ながらしかし、おそらく永遠に解けることのない大きな謎に直面することになる。

 例えば、ラーメンと切っても切れない“どうにもならなさ”というのがある。「わかっちゃいるけどやめられない」的な、アレである。

〈わかっている。自分でも天下一品のこってりに過剰な期待を寄せていると思う。〉

 こんな一文で始まるのは、芥川賞作家の津村記久子による「すべてはこってりのために」だ。

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