
読売テレビ公式Xより
先の皇室典範改正で「旧宮家の男系男子養子案」を強行しようとした際、高市政権の政治家や右派論客が繰り返し口にしていた「男系男子は神武天皇以来2600年以上続く伝統」という主張。それが史実を無視した真っ赤な嘘であることは本サイトでも再三指摘してきたが、ここにきて、古代史の専門家からも一斉に批判を受けていたことが判明した。
7月10日、衆院運営委員会で自民党の小林鷹之政調会長が「皇位の男系継承は2600年守り抜いてきた皇室の伝統だ」と発言したのを受けて、古市晃・神戸大学教授、今津勝紀・岡山大学教授、田中聡・立命館大学教授ら「皇室・皇位をめぐる議論に関する研究成果の尊重を求める古代史研究者の会(以下・古代史研究者の会)」が、「連綿と続けられてきた古代史研究の成果を否定するもので到底容認できない」との抗議声明を出し、1300名を超える賛同を得ているのだ。
声明はまず、「男系男子は神武天皇以来2600年以上続く伝統」といった類の発言がいかに史実とかけ離れたものであるかということを具体的に指摘している。
〈こうした発言は、奈良時代に作られた史書、『日本書紀』にみえる初代天皇の出現と、その後の皇位継承の記述にもとづいています。『日本書紀』によると、紀元前660年にあたる辛酉(かのととり)年に初代神武天皇が即位し、皇位は男系により継承されたことになっています。
しかし紀元前660年は、考古学の研究成果によれば、縄文時代晩期、または弥生時代早期にあたり、日本列島にはまだ文字を使用する文化は存在しませんでした。そもそも、辛酉年が歴史的事実ではなく、その年に大きな歴史的変革があるという中国の思想にもとづいて後世に造作されたものであることが、19世紀末、すでに明らかにされています。 さらに、第2代以降の天皇にも実在しない人物がいることが指摘されています。その後の天皇につながる倭王の地位が世襲的に継承されるようになるのは、紀元6世紀以降とするのが、現在の通説的な見解です。〉
さらに、この抗議声明は、政治家がこうした恣意的な創作を使って政策を推し進めることの危険性も指摘している。
〈1889年に発布された明治憲法では、天皇による統治が「万世一系」の皇統にもとづくものとされ、同時に制定された皇室典範によって、皇位は皇統に属する男系男子が継承すると定められました。1940年、治安維持法をはじめとする一連の政策により、『古事記』や『日本書紀』の記述を疑問視した津田左右吉の学問的な著作が発売禁止とされ、大学教員の地位を追われるといった弾圧が行われました。
1946年に制定された日本国憲法では、こうした過去の反省にもとづいて、学問の自由はもとより、思想・信条の自由が保証されました。以来80年、自由な空気の下で進められた研究は大きく進展し、古代の王族のあり方もさまざまな角度から検討が進められています。
今回の、「皇室2600年の歴史と男系男子による皇位継承」を謳う政治家の一連の発言は、連綿と続けられてきた古代史研究の成果を否定するもので、到底容認できません。またこうした学問的成果の軽視が社会を萎縮させ、思想・信条の自由が再び奪われる世界が訪れることを危惧します。〉
この危惧はまさに、正鵠を射たものだ。男系男子の皇位継承にこだわる高市首相、小林政調会長、維新の藤田文武代表には、皇室への尊敬などない。彼らの狙いはただひとつ、戦前の軍国主義体制の復活なのである。
実際、連中は改正皇室典範を成立させると、次に「皇族の養子となる旧宮家の男系男子らを誹謗中傷から守るべきだ」との建前で、言論を統制する法整備に動き始めている。
このままこんな「嘘の歴史の喧伝」を放置していたら、天皇の神格化教育が学校教育でも復活し、堂々と思想統制、言論統制が行われるようになる可能性もあるだろう。
しかも、恐ろしいのは、古代史件研究者が揃って「事実でない」と明言する嘘の歴史を、極右政治家だけでなく、大手マスコミまでが堂々と喧伝するようになったことだ。
本サイトでは、先日、読売テレビの『そこまで言って委員会NP』で、男系男子派の急先鋒である右派コメンテーター・竹田恒泰氏が、子ども相手に授業形式で、一方的に皇室の嘘の歴史と女性天皇否定論を刷り込む番組を放映したことを報じ、「子ども相手に嘘をの歴史を教えるというのは、明らかにBPO案件だ」と批判した。
その記事を再録するので、右派が語っている男系男子の皇位継承論や皇室の歴史がいかにインチキに満ちているか、メディアがいかに危険なことに加担しているかを知ってほしい。


