小説、マンガ、ビジネス、週刊誌…本と雑誌のニュース/リテラ

menu

テレビの利権を守りたい人たちが合唱する「フジテレビは文春の誤報の被害者」論のインチキを徹底検証!

「週刊文春」1月8日発売号ですでに情報修正 テレビがフジ追及を始めたのはそれより後

 そもそも、この問題を最初に報じたのは「週刊文春」でなく、「女性セブン」12月19日発売号だった。記事のなかで、「セブン」はフジテレビの編成幹部・A氏がこのトラブルに関与しているとして、「当初は、中居さんとA氏、A氏が呼んだ芸能関係の女性の3人で会食する予定だったが、急にA氏が行けなくなったと言い出したため、中居さんと女性の2人だけで始めることになった」という関係者のコメントを掲載している。

 問題になっている「週刊文春」12月26日発売号は、この「セブン」記事を翌週、後追いしたものなのである。しかも、よく読むと「文春」は「Aさんに言われたからには断れないよね」という知人のコメントを紹介しているが、「A氏が誘った」ことを断定しているわけではない。またA氏に対する直撃でも「『女性セブン』の記事はAさんのこと?」「X子さんは『Aさんから飲み会に誘われて断れなかった』と認識している」などと質問。A氏がこれらを否定するやりとりを掲載している。

 断っておくが、「セブン」の後追いで断定的でないから「文春」に責任がないと言いたいわけではない(「文春」だけが批判されて、「文春」より先に断定的に報じた「女性セブン」がほとんど批判されていないのは不思議ではあるが)。

 留意すべきなのは、「週刊文春」が翌号、年明けの1月8日発売号の段階で、改めてこの問題を取材した上、「女性セブン」の報道をもとにした前号の情報を修正していることだ。

「文春」がフジの10時間会見の翌日に改めてお詫びと訂正を出したことから、「今頃になってお詫びを出した」などという批判が盛り上がっているが、「文春」はお詫びより20日以上前に、問題の食事会にX子さんを誘ったのがA氏でなく中居本人であると情報を修正。そのうえで、問題の食事会以前にX子さんがA氏に誘われて中居と会食させられていたことなどを報じているのだ。また、問題の食事会の場所が中居の自宅であったことも、この号ではじめて報じられている。

「文春」の情報修正について、「文春」叩きの火付け役となった橋下徹などは「こっそり上書きした」と批判しているが、大きな事件や犯罪報道などで、先行ニュースや当局情報に乗っかったミスリードを断りなく修正していくことはテレビや新聞もしょっちゅうやっている。もちろん本来ならその都度、訂正・お断りを出すべきだろうが、マスコミでもそういう対応をしているケースは極めて少ない。

「文春」は第一報で「A氏が誘った」ことを断定的に報じたわけではないし、A氏に直撃して否定コメントも載せていたが、それでもすぐに情報を修正し、遅れたとはいえ、わざわざ訂正とおわびを出した。

 こうした点だけ考えても、「文春」の報道姿勢は、“文春憎し”のタレント連中がわめいている「大誤報」などではないし、もしこの程度で古市の言うように「廃刊」しなければいけないとしたら、古市や橋下が出演するフジテレビをはじめとするテレビ局はこれまで数百回以上、放送を停止していなければいけないことになる。

 しかも、誤報のレベルや修正済みという問題以上に大きいのは、フジ糾弾の動きとの時間的なずれだ。じつは文春が第二弾で「当日、誘ったのはA氏でなく中居」という修正情報を出した時点で、フジテレビの責任を問う声はネットで広がり始めていたものの、マスコミレベルではほとんどなかった。いや、それ以前に、テレビは中居のトラブル自体を一切報道していなかった。当事者のフジもA氏の関与について否定コメントを出したのみで、会見を開いておらず、フジからのCM撤退を表明したスポンサーもいなかった。

 新聞やテレビが中居のトラブルをはじめて報じたのは、1月9日。早朝の『THE TIME,』(TBS)が取り上げたが、昼のワイドショーはこの日も一切触れず。この日中居がコメントを出したのを受けて、ようやく『news23』(TBS)『news zero』(日テレ)などの夜のニュース番組が報じ、翌10日になって、『羽鳥慎一モーニングショー』(レビ朝日)『ひるおび』(TBS)が取り上げた(この時点でも、『ゴゴスマ』は1秒も触れず、『ミヤネ屋』(日テレ系)はスタジオコメントなし)。

 しかも、この段階ではまだ中居のトラブル報道がメインで、マスコミではフジの問題に言及する報道はほとんどなかった。フジ追及が本格化し始めるのは1月14日、フジ・メディア・ホールディングスの株主である米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」がフジの姿勢を非難し、第三者委員会での調査を求める書簡を公表した前後からだろう。

 そして、1月17日、同局が1回目の記者会見を開くも、周知のように、放送記者クラブに限定し動画NGで行ったことで批判が激化。マスコミも一斉にフジ追及をエスカレートさせ、翌1月18日には、トヨタ、日本生命などの大手企業がフジのCM差し止めを発表する事態となるのである。

 もうおわかりだろう。スポンサーによるCM差し止めどころか、マスコミがフジテレビの責任に言及する前に、「文春」はもう情報を修正していた。言い換えれば、フジテレビに対する本格追及が始まった時点で、「誘ったのはA氏でなく中居」というのがデフォルトになっていたのである。

 これでどうして、「文春の『A氏が誘った』という報道を前提に、フジへのいわれなき責任追及が始まった」「文春の誤報のせいでフジテレビがCMを引き上げられ、経営破綻の危機に陥った」などということになるのか。

 10時間会見についても同様だ。何度も繰り返してきたように、「文春」は8日の時点で、「誘ったのはA氏でなく中居」と修正しており、20日後に開かれた1月27日の会見の質問者も基本的にはその修正情報を前提にしていた。実際、前後も含めたA氏の関与の有無を問う質問はあったものの、トラブル当日にA氏が誘ったことを前提としたととれる質問はわずかだった。

 ところが、フジを擁護したい人たちは、20日前に情報が修正されていた事実をネグって「文春」が会見の翌日にお詫びを出したことだけにフォーカス。「文春がもっと早く誤報を認めていれば、無駄な質問が飛び交って時間が長引くこともなかった」とかみつき、清水新社長もそれに乗っかって「なぜ(訂正が)昨日だったのかなと」と言い出したのである。

関連記事

編集部おすすめ

話題の記事

人気記事ランキング

カテゴリ別に読む読みで探す

話題のキーワード

リテラをフォローする

フォローすると、タイムラインで
リテラの最新記事が確認できます。

プッシュ通知を受け取る 通知を有効にする 通知を停止する