大阪より愛知の方がはるかに感染者や死亡者を低く抑え込んでいる
まったく吉村知事の狡猾さとメディアの軽薄さにはあきれるほかはないが、しかし、恐ろしいのはこうした構図が今回の知事バトルだけの話で終わらないことだ。
前述したように、大阪のコロナ対策はけっしてほめられるようなシロモノではない。評価できるのは、軽症者や無症状者の施設を整備したことと、十三市民病院をコロナ専門病棟にしたこと(これもやり方が強引で現場は大混乱だったが)くらい。むしろ、感染予防、検査体制や医療体制の整備、自粛補償は他の自治体よりも明らかに後手に回っていた。
たとえば、維新は当初、PCR検査不要論を主張し、実際、日本医師会が3月中旬に発表した調査で、大阪府は検査拒否件数ナンバーワンだったのだ。大阪市では10日間も検査を受けられず、重症化したケースも報告されている。
休業補償についても、率先してやったかのようなイメージがもたれているが、実際は逆。東京都が自粛協力金の導入を打ち出しても、財政力の差を理由に大阪府は消極的なまま。福岡市や千葉県市川市、神奈川県などほかの自治体が導入するという報道があって、しぶしぶやり始めたにすぎない(しかも、その中身はかなりお粗末なものだった)。
今回、大村知事が問題提起した医療支援についても同様だ。愛知県では、感染者を受け入れた医療機関に、1人当たり最高400万円の「医療従事者応援金」を支給するなど、独自の対策で感染者の病床確保に努めていた。しかし、大阪はどうか。吉村知事と松井市長がやったことといえば、最近になって医療従事者に10万円のクオカードを配っただけ。しかも、これ、府の予算から出したわけではなく、原資は民間から集めた寄付金だった(しかも、他人の寄付金なのにクオカードに自分たちのメッセージを入れるという厚顔ぶりだった)。
さらに、大阪のコロナ対策が失敗だったことの最大の証明は、感染者数や死亡者数だ。大阪府の感染者は累計1783名だが、この数はこの数は大阪府より人口の多い神奈川県(1367名)の約1.5倍。大阪府より人口が10%ほど少ないだけの愛知県(511名)と比べると 3倍以上の数だ(5月31日時点)。死者も同様で、愛知県が34名なのに、大阪は83名にのぼっている。
ようするに、実際は愛知県より大阪のほうがはるかに感染者数を抑え込めていないし、支援体制も乏しいのだ。
ところが、吉村知事や維新の“やってる感”演出と、詐術によって、評価は全く逆になってしまっている。メディアの知事通信簿やアンケートなどでも、がんばっている知事1位が吉村知事、一方、大村知事はワースト扱いなのだ。
大村知事のワースト扱いはともかく、このまま吉村知事の作戦に乗っかって彼らを賞賛し続けたら、大阪のコロナ対応の問題点は放置されたままになるだろう。その時被害に遭うのは大阪府民なのだが…
…。
(編集部)
最終更新:2020.06.01 03:33