『直撃LIVE グッディ!』でも中国人観光客をディスる特集
だが、ひどいのは嫌中の極右文化人たちだけではない。マスコミ、とりわけテレビも無茶苦茶な報道をしている。本来、メディアに求められるのは、闇雲に人々の恐怖心を煽ることではなく、ヘイトクライムを抑制する冷静な報道姿勢のはず。ところが、ワイドショーは完全に真逆へ突っ走っているのだ。
たとえば24日放送の『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)では、新型コロナウイルスによる新型肺炎で国内2人目の感染者が東京で確認されたことを伝えるなかで、「中国の旧正月である春節が今日からスタートした」ことを特集した。VTRは「それは、中国・武漢からきた旅行者だった!」というナレーションから始まり、大勢の中国人観光客の旅行バスから出てくる模様へと繋ぐ。番組では中国人観光客のマスクをフォーカスし、実際にはマスクをしている人としていない人がいるのに「マスクをしない人が多い」などとレポート。さらには「話を聞くとあまり危機感が感じられない発言も」と誘導するようなインタビューまで流していた。
いったい新型ウイルスの危険性や対策と何の関係があるのか。こうした報道のあり方は、明らかに中国からの観光客に悪印象を与えようとするものだ。差別意識を丸出しにして「中国人を排除しろ」とがなり立てているネトウヨにお墨付きを与えるだけでない。「中国人旅行客」に関するヘイト的なデマの素地を耕しているということに、ワイドショーは気がつかないのか。
地震や豪雨などの自然災害が起こるたびにSNSでは「外国人が犯罪起こした」というようなデマが出てくるが、今回の状況もそれに酷似している。実際、SNSでは「中国から関西空港へ入国した中国武漢人観光客から咳と熱を検知し、病院へ搬送したものの検査前に逃げた。理由はUSJと京都へ遊びに行きたいから」などとするデマ情報がネトウヨ系まとめサイトなどを通じて拡散された。このデマについては、厚生労働省関西空港検疫所が「BuzzFeed Japan」や毎日新聞の取材に対して「そのような事実はない」と全面否定している。
関東大震災では「朝鮮人が井戸に毒を入れている」などのヘイトデマが飛び交い、日本人による「朝鮮人虐殺」が引き起こされた。その悲劇をからもわかるように、非常時における不安や疑心暗鬼の群衆心理とヘイトスピーチとが結びつくと、取り返しのつかないことが起きかねない。
繰り返すが、新型コロナウイルスの感染拡大に乗じたヘイトスピーチを断じて許してならないのはもちろん、メディアはこうした状況だからこそ、より慎重かつ冷静な報道を心がけなければならない。真に恐ろしいのは、新型ウイルス拡大の驚異よりも、ネットやメディアが扇動する恐怖や排斥感情に流された“大衆の暴力”だ。そのことを、ゆめゆめ忘れないでほしい。
(編集部)
最終更新:2020.01.26 01:39