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『モーニングショー』玉川徹が「嫌韓本じゃない」とお詫びした本を検証! ほとんどはやっぱり“嫌韓・ヘイト本”だった

元韓国大使で徴用工訴訟の当事者企業顧問だった武藤氏の狡猾な加害事実ズラシ

 最後に、元韓国大使であった武藤正敏氏が今年7月に出した『文在寅という厄災』にも触れておこう。最近、テレビのワイドショーへ毎日のように出演しては韓国バッシングの言説を垂れ流している武藤氏。実は2017年まで、徴用工訴訟の当事者である三菱重工の顧問であることが発覚し、その客観性が著しく疑われている。

しかも、武藤氏は2017年に『韓国人に生まれなくてよかった』(悟空出版)というヘイト丸出しのタイトルの本をヘイト出版社から出版しているのだが、今回、『モーニングショー』が紹介した『文在寅という厄災』はその“実質的続編”と呼べる内容だ。

 同書の特徴を簡潔に述べれば、慰安婦問題や徴用工問題など日韓両国の諸問題について、かたや安倍政権の対応の問題点やグロテスクな「嫌韓キャンペーン」はネグりながら、ひたすら「文在寅が悪い」と強く批判することに尽きる。その点だけで言うと、読者の韓国(人)に対する悪感情を煽ることを主眼とするティピカルな嫌韓本とは少し違うのだが、しかし、この本の問題は別のところにある。

 たとえば、同書は〈日本人なら、「韓国はいいかげん感情的な反日をやめ、普通の国なってほしい」と思う〉などとして、“「どうぞお互い利用できそうなところを利用しましょう」という「用韓・用日」の関係”にすべきと主張。武藤氏はこれを「ドライ」「合理的」などと自賛する。

 だが、そこからは戦前日本と韓国の加害・被害関係の史実がすっぽりと抜けおちている。慰安婦問題も徴用工問題も、その根源は、大日本帝国による侵略と人権侵害にある。だが、この本を読むと、武藤氏はその本質を読者に忘却させようとしているように感じるのだ。

〈そもそも歴史に断絶はないのである。韓国人はよく日本人に「歴史を勉強せよ」と言う。確かに日本人は戦前の歴史をもっと勉強すべきだとは思う。ただ、韓国も、戦後の日本が韓国の経済発展に協力した歴史を知るべきである。そうすれば、日本をより客観的に見ることができるはずだ。〉
〈韓国人に正義があるように、日本人にも正義はある。一度謝ったことをひっくり返してさらなる謝罪を求める行為は、少なくとも日本人にとっては正義のかけらもない「信義にもとる行為」なのである。〉

 実のところ、こうした言説は加害事実の矮小化・相対化でしかない。ネトウヨ的感性の増長を呼び込み、他の嫌韓本のような「嘘つき」「わがまま」というレッテル貼りにお墨付きをあたえることになるだろう。

 いずれにしても、『モーニングショー』が“嫌韓本ではない”と「お詫び」した書籍のほとんどは、実際には大衆の劣情を刺激しようとする嫌韓本、あるいは差別を扇動するヘイト本そのものだった。

おそらく紹介した8冊のうちの1冊か2冊の版元か著者から抗議が来たのだろうが、しかし、だったら『モーニングショー』は、一冊一冊を検証して、どれが嫌韓本、ヘイト本で、どれがそうでないのかをきちんと追及すべきだったのではないか。

 それを、面倒だからと8冊を一括りにして「ここに映っている本は、あくまで韓国に関する本とか、文在寅政権を批判する本でした」と謝罪してしまうのは、嫌韓ヘイト本にお墨付きを与えたのも同然だ。

それは、番組で取り上げた書籍に対してだけではない。現在の日本にはその何十倍もこの種の本や雑誌が溢れている。それらをすべて認めてしまうことにもなりかねない。

視聴率目当てで嫌韓を煽る他のワイドショーとは、一線を画しているように見える『モーニングショー』だが、こんな対応では、同じ穴のムジナとみられてもしようがないだろう。

最終更新:2019.09.15 08:22

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