玉川徹が謝罪した本には「在日や韓国人の追放」「韓国人は嘘つき」を主張するヘイト本も
たとえば、元産経新聞社会部次長・高山正之氏の『韓国とメディアは恥ずかしげもなく嘘をつく』を見てみよう。以下はまごうことなきヘイトデマであり、本来ならば引用すら憚れるのだが、そのグロテスクさを示すためにあえて引用したい。
〈支那人が喉から口までラッパ状にして己の意見を主張する。朝鮮人は相手を言い負かすために喧嘩腰の喋り方をする。〉
〈一連の事件から理解できるのは韓国人たちはもはや仏像を壊すだけでなく生身の日本人をぶっ壊したいネガティブ・エネルギーに身を焦がしているという事実だ。〉
〈民意は今、韓国人のノービザを嫌がっている。彼らをノービザにした途端、全国の神社仏閣が荒らされ、仏像が盗まれ、油で汚され、吉田邸は放火された。在日の指紋認証もやめたらその四カ月後に世田谷で一家四人殺しが起きた。
まず韓国人のビザを復活し、特別永住者を含め犯罪人を追放したい。その次は支那人の入国を禁止したいと民意は思っている。〉
念のため言っておくが、2009年の旧吉田茂邸火災の原因は漏電とみられており、「韓国人が放火した」というのはネット上のデマだ。あげく、未解決の世田谷一家殺害事件の犯人を「在日」と決めつけ、韓国人を日本から追放せよと扇動する。ヘイトスピーチ以外のなにものでもない。
呉善花『韓国を蝕む、儒教の怨念』も、典型的な韓国ヘイト本だ。著者の呉善花氏は右派の評論家で、これまで『なぜ「反日韓国に未来はない」のか』(小学館)、『日本人は中韓との「絶交の覚悟」を持ちなさい』(石平、黄文雄との共著/李白社)など多数の嫌韓本を送り出してきた“ヘイトメイカー”である。
その呉氏が今年8月に出版した『韓国を蝕む、儒教の怨念』は、タイトルからして、ベストセラーになってしまったケント・ギルバート氏のヘイト本『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社。詳しくは過去記事参照https://lite-ra.com/2017/10/post-3544.html)の後釜を狙った臭いがプンプンしてくるが、実際、読んでみると、やっぱり「儒教」をダシにしてひたすら韓国の人々をバッシングする構成になっている。
いくつか例示しておこう。呉氏は〈韓国人の「血のつながり」はどんな民族よりも高貴で聖なるものだと価値観付けていくことになります。こうして、自民族が他の民族に優越するというナルシシズム、自民族優越主義、視野狭窄の自民族中心主義を自ずと生じさせていくのです〉と書いている。ようするに“自己チュウな民族”“自惚れた民族”だと決めつけているのだが、こんなのどこの国のナショナリストにも共通するもので、それこそ「韓国人は〜」のかわりに「日本の右派は〜」に置き換えたほうがしっくりくる。
さらに、同書第3章のタイトルは〈「虚言癖−盗用癖」の民族病理〉。この時点で、朝鮮半島の人々を民族でひとくくりにし、“嘘つき”“盗人”とレッテル貼りをする差別扇動に他ならないが、本文でもこうまくし立てている。
〈韓国の犯罪で、偽証罪が世界的に群を抜いて多いことはよく知られていますが、なぜそんなことになるのでしょうか。親族・友人を助けるためには嘘をつくこと、「虚言と欺瞞」を弄することが善であるという教育を受けた、古くからの「身内正義」の考え方があるからにほかなりません。こうして、「嘘をたいしたことと思わない社会の風潮」が蔓延していきます。〉
〈韓国の社会では、嘘をついたり人を騙して人に危害を与えたことが発覚しても、なんら責任をとろうとはせず、またその責任を厳しく問おうとはしない傾向がまことに強いのです。
そればかりか、騙されないようにしなかった本人の責任だ、騙されるとはなんてバカなんだといわんばかりの非難を浴びることにすらなり、諦めて泣き寝入りするほかないことがきわめて多いのです〉
「嘘つきが韓国人の国民性」というのは、ヘイト本の典型的な物言いだが、この本の場合はさらに矛盾だらけで無茶苦茶だ。呉氏は〈韓国の犯罪で偽証罪が世界的に群を抜いて多い〉というなら、なぜ「韓国社会は嘘の責任を取らなくていい」ということになるのか。偽証罪に問われているのだから逆だろう。このロジックでいうなら、嘘の責任をとらなくていいのは、むしろ国会で嘘をついても、政治家や官僚が偽証罪に問われることなどない日本社会のほうではないか。ようするに、呉氏は“韓国は嘘をついて当たり前の社会”というようなヘイトデマをひねりだすために、あれやこれやをこじつけているに過ぎないのである。