首相官邸HPより
統計不正問題をめぐり、今度は総務省が信じがたい暴挙に出た。先週、総務省が、統計委員会の西村清彦委員長が国会に参考人として出席することを拒否すると記した文書を、勝手に捏造して野党に送っていたのだ。
この“捏造文書”が提示されたのは、先週22日のこと。本日おこなわれた衆院総務委員会では西村統計委員長の出席が打診されていたのだが、原口一博・国民民主党国対委員長のTwitterによると、総務省大臣官房秘書課が同日16時38分、立憲民主党の高井崇志・総務委員会野党筆頭理事に対し、こんな文書を送ったというのだ。
〈統計委員会委員長は非常勤の時間給のアルバイト公務員でしかなく、私は本務として、学者としての研究教育、そしてその他企業関連の取締役や顧問の仕事をいくつも抱えて居ます。
国会に対しては、本務を犠牲にして出来るだけ協力してきましたが、本務としての研究教育及びその他の企業関連の仕事に支障を来す自体に至っており、これ以上本務に支障をきたす形では協力出来ません〉
文書には署名も日付も入っていないが、〈統計委員会委員長〉と書かれていることからも、たしかに西村統計委員長による国会審議を拒否する申し出としか受け取れないものだ。
しかし、この文書はあきらかに不審な点が多い。そもそも西村統計委員長は、昨年12月13日に厚労省側から「毎月勤労統計」調査で従業員500人以上の事業所で全数調査がおこなわれていないことを伝えられ、その場で「全数でないのは法令違反ですよ」「これは大変なことですよ」と指摘。これが統計不正発覚のきっかけとなり、厚労省が統計不正を公表した際にはメディアの取材に堂々と応じ、厚労省とそのときどんなやりとりがあったかなど詳細を語っていた。
統計の重要性を重く受け止めているように感じられてきた西村氏が、統計委員長として国会招致を拒否するとはにわかに信じがたい。だいたい、統計委員会委員長という立場を〈非常勤の時間給のアルバイト公務員でしかな〉いなどと言い放つとは、到底思えない。
だが、やはりこの文書は西村氏によるものではなかった。昨日の衆院予算委員会で質疑に立った国民民主党・渡辺周議員によれば、昨日になって総務省大臣官房から、西村委員長による文書が別に届けられた。それは、〈2019年2月23日 西村清彦〉として名前と日付が入っているもので、こう書かれていた。
〈国政における国会審議の重要性は強く認識しております。しかし、同時に、私には研究教育等の本務がある事を認識していただきたいと思います。そのもとで、研究教育等の本務に支障のない限りにおいて、国会には協力する所存です。〉
22日に総務省大臣官房秘書課が野党側に送りつけた文書とはまるで違い、国会に協力する旨が書かれている。その上、この文書はこうつづくのだ。
〈なお、国会周辺には私が提出した「文書」と称するものが回っているようですが、私はそのような「文書」を提出するように指示したことはありませんし、内容も提出を前提とした文書として明らかに不正確であり、ふさわしくありません。このような「文書」が国会にわたった経緯を私は知りませんが、極めて遺憾です。従って、本文書が私の初めての提出文書であることを明確にしたいと思います。〉
つまり、22日に総務省が野党側に送った、国会に参考人として出席することを拒否する文書は、西村統計委員長が書いたものではない、総務省側がでっち上げた“捏造文書”だったのである。