”ケント現象”を特集した「Newsweek日本版」
先週発売の「Newsweek日本版」(CCCメディアハウス)10月30日号の特集「ケント・ギルバート現象」が話題を呼んでいる。
いうまでもなく、ケント氏といえば、数年前から“保守系文化人”として復活を果たした外国人タレント。いまや書店では著書が平積みにされ、とりわけ昨年出版した『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)は大ヒットを記録。『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)や『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)など様々なメディアに顔を出しているが、一方で、その言論内容を精査してみると、中国・韓国へのヘイトまがいやネット右翼そのものの陰謀論ばかりであることは、本サイトでなんども取り上げてきたとおりだ。
そんな“売れっ子”ケント氏の特集を、今回、「Newsweek」が組んだわけだが、なかでも白眉だったのが、アジア事情に詳しいルポライター・安田峰俊氏によるルポと、ケント氏本人への直撃インタビューだ。80年代から90年代にかけ、テレビタレントとして一世を風靡した後、忽然と表舞台から消えたケント氏。安田氏は、そのケント氏が“保守系文化人”としてカムバックした背景とカラクリを丹念な取材を元に伝えている。
実は、“ケント・ギルバート復活”の裏側ついては、本サイトでも3年前の2015年12月に「ネトウヨ文化人として復活したケント・ギルバートの正体」と題した前後編のロング・レポートで詳報したことがあった。
安田氏がその記事を読んでいたかどうかはともかくとしても、今回の「Newsweek」でのルポによって、本サイトの報道の多くが裏付けされたということは強調しておくべきだろう。
たとえば、本サイトが指摘していたように、ケント氏は1980年代に“外タレブーム”を巻き起こした際には、現在の論調と180度真逆だった。むしろ、憲法9条擁護や沖縄へ基地を負担させる構造への批判、あるいは在日韓国・朝鮮人への同情的な発言もしていたのだ。ところがそのケント氏が、朝日新聞が慰安婦報道をめぐって謝罪した2014年あたりから、急激に“右旋回”。「夕刊フジ」など「保守系」のメディアに顔を出すようになり、ネトウヨ文化人の登竜門ことアパグループ主催懸賞論文の最優秀賞受賞などを経て、現在の地位を確立していくことになる。
そして、本サイトがケント氏の変遷をたどるなかで、名指しで指摘していたのが、その言論活動に大きな影響を与えたとみられる“ビジネスパートナー”の存在だった。ひとりが、「新しい歴史教科書をつくる会」など様々な右派運動を展開している保守論壇の大物・加瀬英明氏。もうひとりが報知新聞社出身で、「つくる会」教科書発行のために加瀬氏がたちあげた自由社の代表取締役である植田剛彦氏だ。既報のとおり、この二人はケント氏との共著もあり、氏が以前手がけていた語学スクールビジネスなどにも関与していた。
今回、「Newsweek」のケント特集で安田氏が追及した大きな仕事のひとつは、この二人の“ビジネスパートナー”から直接の証言をとっているところにある。
たとえば植田氏は、安田氏の取材に対し、2013年刊行のケント氏との共著『不死鳥の国・ニッポン』(日新報道)に関して「ケントの『転向』の大きなエポックメイキングだった」と証言。「一時期低迷していた彼に、第2の出発点を準備できたと自負している。私は彼に『これからのあなたは芸能人ではなく文化人だ』と伝え、背中を押した」と、ケント氏の“右派文化人化”に与えた影響を認めたという。