「明治礼賛」の映画製作、国体にも「明治150年」の冠を強制
だが、安倍首相はこの「明治日本」こそが理想だと考えているらしく、これまでもことあるごとに、明治日本=大日本帝国の正当化に血道を上げてきた。その象徴的なものが、2015年7月「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録だ。
世界遺産登録の候補については他にももっと歴史価値のある有力な候補があったにもかかわらず、安倍首相がそれら候補を潰し、帝国主義の象徴でもある産業革命遺産を日本の世界遺産候補にゴリ押ししてしまったのである。
実際、明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録は、安倍首相は幼なじみで加藤勝信一億総活躍担当相の義姉であるの加藤康子氏が登録運動団体の代表者をつとめており、安倍首相がその加藤氏に「君がやろうとしていることは『坂の上の雲』だな。これは、俺がやらせてあげる」と語っていたことが加藤氏自身の口から明かされている。
ほかにも、安倍首相は側近の極右議員や日本会議と連動して、11月3日の「文化の日」を「明治の日」に変えようという祝日法改正運動を推し進めるなど、明治日本の復活キャンペーンをしきりに展開していた。
その安倍首相が、昨年頃から関係省庁に大号令をかけていたのが、「明治150年」にあたる2018年に大々的なキャンペーンを行う計画だ。
昨年1月には、明治150年の記念事業として明治期の国づくりなどを題材とした映画やテレビ番組の制作を政府が支援することを検討しているという報道がなされた。菅義偉官房長官はこれに関し、「大きな節目で、明治の精神に学び、日本の強みを再認識することは重要だ」とコメント。なぜ「明治期の国づくり」限定で国が金を出すのか、とても納得できるものではないが、このとき映画監督の想田和弘氏は、ツイッターで〈戦時中の国策プロパガンダ映画を思い出す。つまらない映画にしかならないことは確実だが、映画を馬鹿にするんじゃないよ。映画は政治の道具ではない〉と怒りを表明していたが、そのとおりだろう。
また、今年の秋に福井県で福井国体と全国障害者スポーツ大会が開催されるが、昨年、その名称に「明治150年」という冠称を付けることをスポーツ庁が福井県に要請。日本体育協会は昨年8月25日、その通りに決定した。「明治150年」という冠称を付けることについては、福井県労連など7団体が反対の申し入れをおこない、「国体は戦後に始まったものであり、明治とは無関係。明治150年で真っ先にくるのは『戦争の100年』という記憶であり、冠にふさわしくない」と県民、県議会での議論を求めていたが、そうした意見は撥ねつけられた。
このように、安倍政権の“明治150年”押しはすさまじい。官邸ホームページには、「明治150年ポータルサイト」なるサイトが開設され、「明治150年」関連施策として実に100を超える事業がラインナップされている。