調査委員会の責任者だった神社本庁副総長が突然の辞任
上層部による明らかな口封じが行われていた訳だが、結局、疑惑解明の動きも信じがたい幕引きを迎えることになる。7月には調査委員会が“売買契約が不当だったとまでは言えない”という趣旨の結論を出して、疑惑の職員宿舎売却はおとがめもなしにしてしまったのだ。そして、8月には、前述したように、稲総合研究部長が懲戒解雇、瀬尾教化広報部長に降格減給という懲戒処分が下されたのである。
稲部長の懲戒理由は、“思い込みによって事実に反する情報を流布し、神社界の信用を傷つけた”等というもの。瀬尾教化広報部長の懲戒理由も、不正な不動産売却を担当したことではなく、反対に、彼が後日に売買価格や取引先の選定について疑義を呈したことで“業務を混乱させた、職場秩序を乱した”等が理由だという。
言っておくが、この2人は、今回の不正な不動産取引疑惑をめぐって、あくまで組織の自浄作用を期待して内部で問題提起したにすぎない。
そうした職員を、逆に「神社界の信用を傷つけた」などとして懲戒処分にするというのは、どう考えても筋が通らない。明らかに不当労働行為であり、2人が処分取り消しを求めて裁判を提訴するのは当然だ。
しかも、このめちゃくちゃな懲戒処分は、逆に、今回の疑惑が神社本庁という組織ぐるみでおこなわれたものであり、上層部が深く関わっていることを証明したとも言えるだろう。その経緯を見ると、不動産取引の真相を明るみに出されてはまずいと考え、2人の“口封じ”をしたとしか考えられないのだ。
さらに、この幕引きにはもうひとつ不可解なことがある。神社本庁が設置した調査委員会が7月にこの不動産取引を問題なし、と結論付けたことは先に述べたが、驚くことにその直後、稲部長の檄文を受け取り、調査委員会の責任者となった小串副総長が辞表を提出し、8月末には副総長を辞任しているのだ。神社本庁関係者はこう語る。
「小串副総長の辞任は本庁内でも波紋を広げている。田中総長は“檄文”を小串副総長が受け取ったことなどに対する“引責”のように言っています。ですが、神社界では別の見方も根強い。それは、今回の騒動と“その根の存在”を重くみた小串副総長が、田中総長に対する“抗議”として辞任したのではないか、というものです。事実、副総長が病気などの理由以外で任期途中に辞めるなんてことは、神社本庁の71年の歴史で初めてだと思います。それだけ異例の辞任だったんです」
不可解な不動産取引に、神社本庁職員2名への不当としか思えない懲戒処分、そして副総長の異例の辞任──。処分の不当性については今後、司法の場で争われることになったが、他方で、本サイトが前回の記事で触れたように、ディンプル社が不動産取引等で儲けた金が神社本庁幹部らに還流されているのではないかという“噂”も神社界で後を絶たない。こちらも真相を明らかにすべく、本サイトでは続けてこの問題をリポートしていくつもりだ。
(編集部)
最終更新:2018.09.17 10:36