地上戦はない? 戦争のリアルな危険性を認識していない上念のお花畑思考
前述したように、アメリカが北朝鮮を先制攻撃すれば、北朝鮮はソウルに向け一斉砲撃をし、日本にも中距離ミサイル・ノドンを撃ち込んでくるだろう。そこには、韓国に住む約20万人もの米国人も含まれ、日本も米軍基地とその周辺に住む米兵の家族が標的になる。その人たちを一斉に避難させるのは困難であり、もし、先制攻撃によって自国民を大量に死なせてしまったら、それこそアメリカ中から批判を浴び、トランプ政権は崩壊してしまうだろう。
そのことに気づいているティラーソン国務長官、そして軍人出身のマティス国防長官が暴走するトランプ大統領を抑えこんでいるのがいまの状況だというのは、ほとんどの専門家が口をそろえている。
実際、先制攻撃の困難さは、オルタナ右翼の親玉ともいえるスティーブン・バノン前首席戦略官兼大統領上級顧問でさえ口にしていた。バノンは「(北朝鮮と)軍事的解決などない。忘れてしまえ。開戦30分でソウルの1000万人が通常兵器で死亡するという難題を一部でも解決しない限りは、意味不明だ」と発言。それがもとでトランプに更迭されたと言われている。
ようするに、上念はアメリカのタカ派軍人や政治家でさえ口にしている戦争のリアルな危険性をまったくわかっていないくせに、したり顔で村本に「その戦争観は古い」「いまの戦争はボタンを押せば終わる」などと説教をしているのだ。
しかも、上念はいまの戦争にまるで地上戦がないかのような主張をふりまいているが、これもまるきりのインチキだ。アフガニスタンやイラクの事態を見ればわかるように、空爆で仮に主要施設を破壊し、権力者を殺害したとしても、そのあとに泥沼のゲリラとの地上戦が待っている。それは、北朝鮮との戦争も同じだ。仮に金正恩の斬首に成功したとしても、抵抗を続ける旧勢力の掃討に米韓が乗り出し、安倍政権も集団的自衛権を行使して、自衛隊を朝鮮半島に投入。後方支援と称して、戦闘に参加させるのは目に見えている。
村本が「いま戦争が起きたら10代20代の若い子が戦争にいく。これからの若い子が爆弾で体バラバラになってまで得る平和に強い疑問がある」と批判しているのは、まさにこのことを指摘しているのであり、「古い戦争観」でも何でもない。お笑い草なのは、明らかに戦争を『タイムボカン』のようなものだと考えている上念の「お花畑思考」のほうだ。
それにしても、なぜ、こんなふうに現実から目をそらし、戦争をゲームのようにとらえ、煽動する連中がここまで幅を利かすようになってしまったのか。