ドナルド・トランプ公式ツイッターアカウントより
白人至上主義者らと反対派の衝突事件をめぐるトランプ大統領の人種差別肯定発言問題。本サイトは18日朝の記事で、差別が絶対的に悪であるという自明の前提を無視したトランプ的“どっちもどっち論”が実は日本で大手を振ってまかりとおっている状況を批判したが、さっそく、ワイドショーでとてつもなくひどい“どっちもどっち論”が垂れ流されていた。
それは、同じく18日放送の『バイキング』(フジテレビ)でのことだ。『バイキング』といえば元横浜市長の中田宏氏や“皇族芸人”こと竹田恒泰氏など、右派の安倍応援団をコメンテーターに起用しているが、この日のスタジオには最近、作家の百田尚樹らとつるんで反中言説に精を出しているジャーナリスト・有本香氏が登場。トランプ発言をめぐるスタジオトークのなか、有本氏はこんなことを言い出したのだ。
「ただ、この事件の背景に、リー将軍の像を撤去するかしないかという問題がありますよね。これはちょっとなやましいところもありまして。奴隷制があった時代のアメリカのいろんな事柄というのは、芝居にも映画にもなっているじゃないですか。いまやアメリカでは、その時代の名作と言われるような映画なんかも公開できないという状態になっているんですね。それが、現在のアメリカの政治的正しさ、ポリティカル・コレクトネスってよく言われたんですけど、そういうものになっている」
「この差別問題っていうのは、アメリカの中に非常に大きな影も落としているだけではなく、そういう新たなルールみたいなもの、こういうものを形成してしまっているというところがあるんですよ」
リー将軍とは、南北戦争で奴隷制存続派の南部連合を率いた軍人、ロバート・E・リーのことだ。今回のバージニア州での衝突事件では、奴隷制を支持した勢力を顕彰するのは適切でないという広い認識を背景に、公園のリー将軍の像を撤去する決定を市が下した。これに対し、像の撤去反対を名目に白人至上主義者やネオナチらが集合して大規模集会とデモを行ったのが事件の発端だ。
つまり有本氏は、このリー像の撤去問題を「なやましいところもある」と表現し、奴隷制、人種差別撤廃をめぐるポリティカル・コレクトネスに話にすり替えているわけである。しかも、明らかに“反差別に配慮するあまりいきすぎたポリコレ”という文脈で、そんな話を唐突に持ち出したのだ。