鴻上尚史が指摘する、テレビで政治ネタが流れないことの弊害
鴻上氏が言う〈テレビが許さない〉というのはまぎれもない事実だ。本サイトでも取り上げているが、政治風刺を入れ込んだコントを得意とするコントグループ、ザ・ニュースペーパーのリーダーである渡部又兵衛氏は、17年5月14日付しんぶん赤旗日曜版に掲載されたインタビューでこんな裏事情を暴露していた。
「僕は最近コントで「カゴイケ前理事長」を演じています。そう、森友学園問題の。こんなコントもしました。
アベシンゾウ首相(舞台袖から登場し)「どうも、カゴイケさん。お久しぶりです」
カゴイケ「あ、首相。ごぶさたです。…『お久しぶり』って、やっぱり僕ら、知り合いですよね?」
それから二人は「お互い、奥さんには苦労しますね」と嘆きあうといった内容です。
見たテレビ局の人が「面白い!」といってコントを放送することになりました。収録までしたのに放送当日、「すみません。放送は見送りです」と電話がきました」
このようなかたちで、バラエティー番組で政治をネタにしたコンテンツが流されなくなった結果どのようなことが起こるか。
人々が時事ネタをパロディーにして笑うという文化的コードを共有することができなくなるのである。だから、政治家を茶化すような発言がメディアに流れると、それがすぐに「怒り」へと転化する人が少なくない数存在するようになった。
〈テレビが政治ネタをお笑いにすることを許さないと、どういうことが起きるかというと、「人々が政治ネタを笑う習慣が生まれない」となります。
笑いは文化であり、文化はゼロからは生まれません。繰り返しと蓄積、伝統の中で育つのです。
が、「政治ネタ」を見たことがない視聴者はどうやって笑っていいか分からなくなるのです〉(前掲「SPA!」より。以下すべて同じ)
その結果生まれたのが、メディアでの安倍政権批判が行われるやいなや、ネトウヨ的思想をもつ人々から大量のクレームが送られてくるという状況である。そして、それがメディアの萎縮をもたらし、ますます、政治や社会的トピックに関する発言をタブーにさせていくという悪循環をもたらしている。