フジテレビは日枝氏の「院政」に移行していくのか?
前掲「FRIDAY」で日枝氏は「会長の私が残っていては新しい風が吹かないと思い」と語っていたが、これでは「新しい風」など吹きようもないだろう。しかし、こんなものではまだ終わらなかった。嘉納新会長はあろうことか日枝氏を「代表」と呼び、「院政」の構図を自ら強調し始めたのである。
「そういうことで、日枝取締役相談役を『代表』とお呼びすることにしたいと思いますが、代表、よろしゅうございますか。みなさんもご異議ございませんか? ご異議のない方は拍手をお願いいたします!」
「FLASH」(光文社)17年7月18日号には、先月28日に行われたフジ・メディア・ホールディングスの定時株主総会のレポートが掲載されていたが、そこには、前述したような日枝氏の「院政」への懸念や、「亀山(千広)氏はBSフジに飛ばされるのに、日枝氏は取締役相談役として残るのは納得できない!」といった怒号が飛び交っていたと記されている。
長く視聴率三冠王の座を独占していた過去もあり、日枝体制が世の中の流れとうまく合致していた時期もあったかもしれない。しかし、現在は明らかにそれが世間の風と齟齬をきたしている。
であれば、現場の担当者による新しい施策に任せ、間違ってもそれを邪魔立てするようなことはあってはならないのだが、日枝氏はそのような姿勢をとってこなかった。
「週刊文春」17年5月25日号ではフジテレビ社員の弁として、亀山氏が「日枝さんの意向は絶対なんだ。自分のやりたいことがなかなかできない」や「日枝さんが何も言わなくても、どう思っているか感触でわかるんだよ」との愚痴を漏らしていたと報じられていたが、それが顕著にあらわれているのが、「お荷物」と化した長寿番組をめぐる扱いである。
亀山氏が社長に就任して以降、フジテレビは『森田一義アワー 笑っていいとも!』や『ライオンのごきげんよう』といった長寿番組を次々と終わらせてきたが、なぜか真っ先に終わらせるべきであろうあの番組にはかたくなに手をつけなかった。
それは『とんねるずみなさんのおかげでした』。90年代には一世を風靡した同番組も、いまでは平均視聴率6%を推移するような状態になっている。しかし、その割には、とんねるずのギャラ(「週刊文春」13年7月4日号では1本あたり1000万円超とも報じられている)を筆頭にコストのかかる番組であり、芳しい成績を残せていないフジテレビにとってはいの一番に切るべき不良債権となっているのは疑いようがない。しかし、ご存知の通り、この番組に手がつけられることはなかった。それは、同番組が日枝氏の「会長案件」となっており、フジテレビ社員の誰も触れることのできない「タブー」だからだ。