そう、松本はあのインチキな都構想を煽りはじめたのだ。都構想のことをもちだせば、松井に媚びることができる上、“大人のオレ、政治わかってる感”を出せるとでも思ったんだろうが、中身を知らないまま、維新の詐術に丸乗りしていることが丸わかり。そのイタさに、見ているこちらが恥ずかしくなるほどだった。
そして、そのあとは冒頭に紹介したように、みんなでわきあいあいと、予定調和の松井府知事のプライベート話に終始したのだった。
「ヤンチャだったんでしょ?」
「永ちゃんのすごいファンなんでしょ?」
「高校中退なんですよね?」
「輩だったんでしょ?」
「暴走族だったんですよね?」
「奥さんにめっちゃ弱いらしい」
ようするに、疑惑の渦中にある府知事を出演させながら、出演者たちは追及するどころか、その疑惑払拭に全面協力していたのである。
いや、もしかしたら、今回の『ダウンタウンなう』松井知事出演には最初からそういう意図があったのかもしれない。万博アンバサダーに就任したとたんに森友疑惑勃発で巻き込まれたかたちになったダウンタウンと、森友スキャンダルの関与を追及されている松井サイドが、イメージ回復のために仕掛けたものではないか。
実際、この番組の冒頭、坂上がダウンタウンのアンバサダー就任に触れて、「あれはやっぱり、森友問題の……」と冗談を言おうとすると、坂上が言い終わらないうちに、松本と浜田がふたりそろって、ものすごい勢いで「森友関係ない」と否定していた。そのマジぶりが、逆に今回の番組の目的を物語っているといえるだろう。
しかし、恐ろしいのは、そんな疑惑政治家のプロモーションまがいの番組が、一定の影響力をもち、実際に、松井知事のイメージアップに寄与してしまいかねないことだ。
本サイトは、芸人やタレントが情報番組に出演して、政治問題や社会問題を扱うことの危険性をかねてより指摘してきた。強固な上下関係に縛られ、空気を読むことばかりを要求される日本の芸能界の住人が権力批判なんてできるはずがない。むしろ、CMなどに出演し、企業や政治家とも付き合いのある芸能人にニュースを語らせることは、恣意的な世論誘導につながりかねない、と。
そういう意味では、今回の『ダウンタウンなう』は、そのことをもっともよく表した番組だったと言えるだろう。
(編集部)
最終更新:2017.12.01 07:19