さらに問題なのは、この安保法に基づく「米艦防護」の任務内容だ。そもそも「米艦防護」とは、安保法制で新設した改正自衛隊法95条の2における、自衛隊による米軍等の「武器等防護」を指す。従来、自衛隊は自らの艦船や武器等しか守ることができなかったが、この改正により平時から米艦船を守るとの名目で武器の使用が可能になった。たとえば、防護する米艦がミサイル攻撃された場合、自衛隊はこれを排除することになる。事実上、同行する米艦隊の戦闘をサポートするものなのだ。
米軍が軍事的圧力を高めているこの状況で、米艦防護の任務を付与することは、カールビンソンとの共同訓練同様、憲法9条が禁じた《武力による威嚇》にあたるのはもちろん、《武力による行使》に発展する可能性がある。
たとえば、米艦防護中に米軍が北朝鮮と戦闘に突入すれば、ただちに「存立危機事態」に認定し、法的根拠をすげ替えて集団的自衛権を発動する。つまり、米軍防護の任務付与や共同訓練は、そうした軍事行動への準備行為ともいえるのである。
しかも、暗澹とさせられるのは、こうした安倍政権による憲法空文化、米軍との一体化が北朝鮮を抑止するどころか、逆の結果になっていることだ。
朝鮮半島の緊迫はこれまでも何度もあったが、北朝鮮の標的はもっぱら米国にのみ向けられていた。過去には、北朝鮮高官が日本に対して、非公式に「我々の標的は米国であり、日本は関係ない」と伝えていたことが報じられたこともある。
ところが、安倍首相がトランプの姿勢に全面的賛同を示すと、北朝鮮は一変し、日本への攻撃を口にするようになった。さらに、自衛隊のカールビンソンとの共同訓練や米艦防護が明らかになると、その態度はエスカレート。朝鮮労働党の機関誌「労働新聞」は2日付の論評で、日本を「米国の核戦争騒動で漁夫の利を得ようとしている」「米国の侵略策動に追従しながら無事と考えるのは愚かだ」と警告し、「米軍の兵站、発進、出撃基地になっている日本が真っ先に放射能雲で覆われる」と、日本に対する核攻撃まで示唆しはじめた。
ようするに、安倍政権によって、日本が米朝戦争に巻き込まれる可能性が高まり、日本国民の生命や財産が脅かされる危険性が増しているのだ。
しかし、考えてみれば、それも当然だろう。この男の目的は、「北朝鮮危機」に乗じて安保法制に基づく任務をどんどん実体化させること、安保法制の実績づくりや危険な自衛隊運用を繰り返し、憲法を骨抜きにさせることなのだ。それによって、9条の条文と現実をさらに乖離させ、9条改憲にもっていく。そのためには日本国民の生命や財産なんて端からどうなってもいいのである。