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高畑勲監督が沖縄の基地問題を描き続ける三上智恵監督と対談、安倍政権を止められない苦悩を吐露

高畑勲監督が沖縄の基地問題を描き続ける三上智恵監督と対談、安倍政権を止められない苦悩を吐露の画像1
4月7日に行われたトークイベント


「中国は怖いとかって煽られて、どうかしてる。もちろん中国は大国ですから、怖い側面がないわけではないけど、アメリカだってものすごく怖い。シリアに爆撃しましたよね、今日。やっぱりトランプがこういう形で出てきている。何が起こるかわからない」

 米トランプ大統領がシリア・アサド政権へのミサイル攻撃を公表した4月7日、スタジオジブリの高畑勲監督は、こう戦争への危機感を募らせていた。東京・ポレポレ東中野で行われた、三上智恵監督とのトークイベントでのことだ。三上監督は沖縄の米軍基地や自衛隊ミサイル配備問題などを追い続けるドキュメンタリー作家で、現在、最新作『標的の島 風(かじ)かたか』が同映画館で公開中。以前から三上作品を鑑賞してきた高畑監督は、同作にも推薦文を寄せている。

 二人は数年前、とある映画関係のイベントで出会った。三上監督は初対面のときに、緊張しながら「私は『火垂るの墓』が好きで」と話しかけた。すると高畑監督は、「『火垂るの墓』のような作品では次の戦争は止められない。あなたがつくっているような映画が、次の戦争を止める。だから、あなたはもっと頑張りなさい」と語ったという。
 
 三上監督からこのエピソードを明かされた高畑監督は、「そんな立派なことは言ってないと思うんですけど」と謙遜するが、本サイトでも報じてきたように、戦争映画の傑作として名高い『火垂るの墓』ですら、「戦争は悲惨なものだ」という受け取り方だけでは不十分であると以前から訴えてきた。高畑監督は、トークイベントでも観客にこう語りかけた。

「ただ、『火垂るの墓』のようなものが戦争を食い止めることはできないだろう。それは、ずっと思っています。戦争というのはどんな形で始まるのか。情に訴えて涙を流させれば、何かの役にたつか。感情というのはすぐに、あっと言うまに変わってしまう危険性のあるもの。心とか情というのは、人間にとってものすごく大事なものではあるけれども、しかし、平気で変わってしまう。何が支えてくれるかというと、やはり『理性』だと思うんです。戦争がどうやって起こっていくのかについて学ぶことが、結局、それを止めるための大きな力になる」

 三上監督が頷く。

「私も沖縄で20年放送局に勤めていましたが、毎年6月23日のたびに『どんなに沖縄戦が悲惨だったか』という企画をやりがちなんです。でも、『どれだけ悲惨かはもうわかったから、今は平和でよかったね』という感想ではね……。じゃあいま、本当に『平和』ですか? 日本の基地もアメリカの基地もあれだけあるのに」
「10年ぐらい前から私は『1945年のことを学ぶんじゃなくて1944年のことを学ばないと次の戦争は止められない』って、いつも企画会議で言っていましたが、何か間に合わない状況になりつつありますよね」

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