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表現者ネットワーク(AVAN)代表・川奈まり子インタビュー

強要問題で自主団体を設立した元AV女優が法規制に反論!「権力の介入はAV 業界をさらに危険な場所にする」

──これまでの当局のやり方をみると、新たな法規制、あるいは新たな規制団体をつくっても、結局は役所の利権にしかなっていないことが多いですよね。出演者の人権を守るという意味では、川奈さんの指摘通り逆効果になってしまったケースも少なくない。ただ、一方で、HRNが9月5日に発表した報告書(「日本・児童ポルノ規制の実情と課題 子どもたちを守るために、何が求められているのか」)などの提言はどうでしょう。AVに関わるすべての企業に出演者の年齢確認資料の保管を義務付ける、という提案をしていて、これから本格検討が進むのではないかと言われていますが。

「いや、あのHRNの提案はかなり問題があります。たしかに児童ポルノは絶対に許せないものですが、現在でも、メーカーは出演者の年齢確認を厳格に行っており、その情報の保管・管理も行っているんですね。児童ポルノ根絶のためならば、これをより徹底すればいい。ところが、HRNの提案では、『制作、編集、流通、審査、販売、配信等に関わる全ての関係者』、つまりビデオショップや動画配信サイトなどの末端にまでAV出演者の個人情報の共有を求めているんです。しかも、氏名年齢のみならず住所まで情報公開することを求めている。これは、AV女優のプライバシーを著しく侵害するものです」

──確かに、ここまで個人情報を広げてしまうと、AV女優に対するストーカー被害や、過去の出演歴暴露などといった被害を生み出す可能性がありますね。

「どうしてこういう発想が生まれてくるのか。それは、彼らがAV女優の『人権』を認めてないからですよ。出演強要などの被害に遭って傷つく人は誰ですか? AV女優なんですよ。彼女たちを守るために始まったはずの議論が、いつの間にか、さらに彼女たちを傷つける方向に向かい始めている。
 AV女優たちの一番の悩みはヘイトクライムです。住んでいるアパートを追い出されるとか、仕事をクビになるとか、職場でイジメに遭うとか。会社でAV女優だった過去がバレてレイプされそうになったという相談すら受けたことがあります。
 私もライターとして連載させてもらっている媒体から『川奈さんがAVに出ているなんて知りませんでした。今後の取引は中止させていただきます』と言われたり、編集部は大丈夫でもスポンサーからNGが入って仕事がなくなったりと職業差別を受けてきました。
 本当にAV女優を守るのであれば、AVは悪、AVに出た女性の人生はもう取り返しがつかないと煽り立てるのではなく、どうすれば出演者の権利が守られるかたちでAVがつくられるかというシステムづくりのほうにこそ議論が行われるべきなのに……」

──マスコミや政府で行われている議論にはその視点が抜け落ちている、と。

「あと、これは恐らくAV出演者だけの問題ではないと思うんです。『いたいけな女性たちを搾取する悪辣なAV業界を叩くんだ』という構図であれば、世間からは反対意見は出て来にくいわけですよ。だから、AV業界叩きがこれだけ盛り上がっているんだと思うんですが、この流れはAVだけにおさまるのでしょうか?
 AV出演強要を議題にした9月12日の『男女共同参画会議』には十数名もの警察官僚が詰めかけていましたし、今回の法規制に向かう提言を歓迎する保守派の政治家もたくさんいます。
 エロは嫌いな人も多いし、世間の共感を得るとっかかりにもなりやすい。でも、AV業界規制が突破口となって、これがいずれ作家、映画、漫画家、そして報道機関に対する規制に飛び火する可能性だって十分考えられますよね。
 AV女優たちが言われたように、いずれ、作家や映画監督やジャーナリストの住所を世間に公表することを義務づけられるなんて提言がなされることも絵空事の話ではないかもしれない。そのことをマスメディアに関わる人たちはよくよく考えていただきたいなと思うんです」

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