広島の平和公園でスピーチを行うオバマ大統領とその横で立っている安倍首相(YouTube「ANNnewsCH」より)
昨日のオバマ大統領の広島訪問は、たしかに戦後初の出来事として歴史的な1ページとなった。とくに、スピーチ中には、日本人だけでなく同じように被爆して亡くなった朝鮮人やアメリカ人捕虜の存在にも言及し、「核保有国は恐怖の論理から逃れるべきだ」と強調。当初から予想されていたように広島・長崎への原爆投下に対する謝罪の言葉はなく、核廃絶を訴えたもののアメリカの実態とはかけ離れているなど矛盾もあるのだが、世論はオバマに好意的だ。
もちろん、オバマ広島訪問が高評価に終わっていちばんご満悦なのは、安倍首相だ。G7伊勢志摩サミットでは「リーマンショック前と似た状況」などと言い出し世界の失笑を買ったが、今度は“オバマを広島に呼んだのは俺”と言わんばかりにアピールした。
だが、当然ながら安倍首相は、別に「歴史的訪問の立役者」でもなんでもない。核廃絶を訴えてノーベル平和賞を受賞したオバマにとって、広島訪問は任期中に自身の功績を残す格好のステージ。他方、憲法改正の物騒な本質が露呈して支持率が低下することを恐れる安倍首相は、そんなオバマに“あいのり”しただけ。広島のことなど歯牙にも掛けていないだろう。
それは、安倍首相のこれまでの広島や長崎への訪問での言動を振り返れば、歴然としている。その最たるものは、2014年の広島での平和記念式典と長崎での平和祈念式典における“連続コピペスピーチ”騒動だ。
まず、8月6日に広島で演壇に立った安倍首相は、冒頭から2013年のスピーチとほぼ同一の文章を“朗読”。中盤の核軍縮などの実績アピールのくだりはアップデートしていたものの、締めの文章までほとんど全部同じという有り様だった。
二度と戦争を起こさないという決意や、犠牲となった人びとへ思いを馳せる、その気持ちがあるのなら、こんなことは絶対にしない。それゆえこのコピペ演説には「被爆者を軽視している」と批判の声があがっていたのだが、安倍首相はなんと、9日の長崎でも再び2013年と同様のコピペ演説を披露。批判を批判として受け止めもしなかったのだ。実際、式典後の面談で、長崎原爆遺族会の正林克記会長が安倍首相本人に「がっかりというか、被爆者みんながびっくりした状態でいます」と思いを伝えたが、このとき安倍首相は下を向いて資料に目を通し、正林会長の顔さえ見なかったという。
こうした安倍首相の無神経かつ被爆した人たちを愚弄する態度は、これだけに留まらない。同年、長崎での被爆者団体との懇談で安倍首相は、さらなる醜態をさらしているのだ。