そうやって、彼女は政府間で正義が阻まれたなかで闘いつづけた。事件から12年後、アメリカでもレイプ犯を相手に訴訟を起こし、勝訴した。彼女がこの訴訟で得た賠償金は、たったの1ドル。だが、彼女が欲しかったのはお金などではない、真実をあきらかにすること、ただそれだけだったのだ。
本書のなかでキャサリンさんは、〈人々が、ここには確かに重大な問題があると認めたとき、はじめて変化が生まれるのだ〉と綴っている。
わたしたちは、その〈重要な問題〉をずっと目の当たりにしてきたはずだ。遺体になって発見された女性について、米軍属の容疑者は「狙う女性を2~3時間探し、見つけた女性を背後から棒で殴って強姦した」と供述しているが、こんなふうに沖縄では戦後ずっと、幼児から大人まで数え切れない人びとが性犯罪のターゲットにされてきた。そしてその加害者の多くが正当な裁きを受けていない。この現実を、自分の住む町の出来事として、あるいは自分の身に起こりかねない事件だと想像すれば、基地や日米地位協定の問題がいかに異常な状態を引き起こし、沖縄の人びとがどんな思いを強いられているか、わからないわけがない。
変化を求めて、いま、沖縄では大きな声が起こっている。キャサリンさんも声をあげるそのひとりだ。他人事めいた安倍首相とオバマ大統領に事の重大さを気付かせるためにも、いまこそ、ひとりひとりが沖縄の声に加わる必要がある。
(水井多賀子)
最終更新:2016.05.27 03:25