突然、言葉が通じない教室に放り込まれ、一方で家族関係も複雑に。だが、そんな苦労を自らは語らない。きっと彼女にとっては「楽しかった!という記憶だけ」なのかもしれない。ただひとつ、彼女はこんなことを話している。
「中学2年の時に、友達にすごく一生懸命説明したのに『ちょっと何を言ってるのか分からなかった』って言われたのがすごくショックで、そこからかなり頑張って中3の頃には普通に会話も出来てたと思う」(前述インタビュー、以下同)
そして、彼女が「転機」と語るのが、高校時代のアルバイトだ。
「高校生になって、家のことも支えなきゃと思ってアルバイトを始めたんだけど、それはひとつの転機だった気がする。人と接することがさらに好きになったの。老若男女、いろんな人がお店に来て、そういう人たちとかかわれることが楽しくて、そこから一気に大人になっていったのかな~って」
このときのアルバイトとは、地元のホームセンターのことだろう。実際、ローラは13年のブログでホームセンターへ変装して出向き、同僚と再会したことを報告。「うれしくて、なみだがとまらなかった。みんなだいすき」と綴っている。
そうして渋谷でスカウトされモデルの世界に飛び込み、一躍“タメ口キャラ”でブレイクしたのは周知の通りだが、いまもローラには“もっと勉強をしたかった”という思いが強いのかもしれない。事実、ローラは地道に英語の勉強をつづけてハリウッドデビューを射止めたが、学ぶことが自分の可能性を広げるということを、彼女は身をもって知っているのだろう。
家庭が貧しいために勉強ができない、進学できないという子どもたちの存在は、なにも発展途上国だけの話ではない。日本では6人に1人が貧困といわれているにもかかわらず、国立大は今後40万円も授業料を大幅値上げするといい、奨学金返済の金利は異常に高いままだ。だが、社会では「貧しいことを理由に進学できないと言うのは努力が足りないから」「貧乏でも努力をすればのし上がれる」などと自己責任論をぶつ人は相変わらず多い。
しかし、子どものころから苦労を背負い、努力によって道を切り拓いてきたローラは、そんなことは言わない。
「今こうして私がここに居られるのは、差し伸べてくれる手があったり、諦めないでいてくれた人たちがいたから――。私も誰かのそういう手になりたいし、そのことを諦めたりもしたくない」(同前)
貧困は社会全体の、わたしたち一人ひとりにかかわる問題だ。ローラの「貧しい子どもの役に立ちたい」という強い意志。この思いがもっと広く共有される社会になることを願わずにいられない。
(大方 草)
最終更新:2016.04.28 01:23