「(1992年をピークに)高卒求人数は急速に減少していきました。1995年には64万7000人とピーク時の半分以下となり、2011年には19万5000人にまで減っています」
これは景気の変動とは別に、非正規雇用の増大や業務の複雑化など構造的な問題があるという。高校を卒業しても正規雇用されず、求人も少なくては無理をしても大学に行くしかない。
「2011年度の高校新卒者の求人倍率は0.68倍、なかでも北海道は0.29倍、東北では0.32倍、山陰地方で0.46倍、北九州で0.45倍、南九州で0.33倍と極めて低くなっています。この状況では、家計が厳しくても、就職するためには大学に進学せざるを得ないと考える人々が増加するのは当然でしょう」
こうして何重もの社会の構造的問題が存在し、自分ではどうしようもない理由で、卒業後も奨学金に苦しめられるのが現在の若者なのだ。では奨学金問題の解消のためにはどうすればいいのか。
本書では大学授業料の無料化や貸与ではなく給付型奨学金の充実、延滞金撲滅などの指摘がなされている。
しかし根本的な問題解決には、国や政府の政策転換が絶対に必要だろう。1億総活躍社会を謳うなら、まずはこうした若者の教育、育成にこそ金を使うべきだ。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.11.24 11:36