現在でもこんな有様なのだから、DNAが捜査当局に独占されればどんな暗黒な事態が待ち受けているか。想像するだけで恐ろしい。さらにそれを独占する科学警察研究所や科学捜査研究所の実情もベールに包まれている。
そもそもいくらDNA鑑定の精度が高まっているといっても、それを収集し扱うのは人間だ。扱いにミスがあったり、犯人をでっち上げて恣意的にDNAを付着させることなどいとも容易いことだ。冤罪を防ぐどころか、再鑑定が不可能になり、捜査の誤りや無罪を証明する手段を奪うものでもある。
さらに問題は、こうした捜査機関による“DNA独占”は、朝日新聞が昨年11月5日付で報じたくらいで、メディアではほとんど報じられないことだ。
ほんの一部の可視化と引き換えに、盗聴、司法取引、そしてDNAまで獲得しようとする国家・捜査権力。安保法制とともに、その監視を怠ってはいけない。
(伊勢崎馨)
最終更新:2015.10.31 11:42