しかも、審査員会で選考された案を修正する必要があるなら、佐野氏ではなく、次点のデザイナーの案にするか、あるいは審査委員会を開き直して、差し戻すのが筋。ところが、森会長と武藤事務局長はデザインの修正指示も、審査委員に一切相談なしに2人で進め、佐野氏が出してきた例のパクリ疑惑のある最終案を勝手に採用決定してしまったのだ。
永井氏は読売新聞の取材で、最終案について「(発表の)1週間くらい前に知らされ、国際商標を取ったというので、いまさら何を言ってもしょうがないと思って了承した」とも言っている。
「うがった見方をすると、組織委が原案を出してきたのは、自分たちの責任逃れのためだったのかもしれません。佐野氏は後ろ暗いところがあったのか、もともと原案を出すのに抵抗していた。ところが、このままだと、森会長と武藤事務総長が勝手に最終案を選んだといって責任を追及されかねない。それで先回りして原案をもちだしたんじゃないでしょうか」(前出・全国紙政治部記者)
ようするに、国立競技場に続いて、エンブレムも森会長が戦犯だったというわけだ。ところが、こうした経緯があったにもかかわらず、森会長はエンブレム撤回公表直後に「何が残念なんだ」と不快感を露にし、その後も「だいぶ、えらい目に遭った」などとまるで自分には一切の責任がないかのように嘯いているのだから、開いた口がふさがらない。
いや、それどころか、自らの責任を追及されることを恐れた森会長は、マスコミ、特にテレビ局に対し圧力をかけているという話まで流れている。
「エンブレム撤回問題を報じる番組に対し、五輪関係者はさかんに森会長に対する批判をしないよう働き掛けています。実際、森会長の『躍動感がない』発言を紹介した『クローズアップ現代』でも、結局は森会長に対する責任論にはまったく触れていませんでしたし、コメントを求めた識者や専門家にも『森さんの批判はしないで欲しい』と条件をつけ、そのため何人もの関係者に断られたと聞いています。また、いくつかの民放でも森会長の批判や責任論をNGにするだけではなく『森喜朗という名前を出すな』という自粛がなされている」
新国立競技場、そしてエンブレムにまで口を出し、かき回すだけかき回して責任を取らない“ド素人老害”の森会長。こんな人物が会長をやっているかぎり、まだまだトラブルは起き続けるだろう。
(時田章広)
最終更新:2015.09.08 03:44