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撤去要請! 会田誠の“反文科省”“反安倍”アートを見に東京都現代美術館にいってみたら…

 一方、「問題視」されているという映像作品のほうは、会田氏が安倍首相を意識しているように見える七三分けのスーツ姿で、国際会議で演説している様子を映し出しており、たしかに「檄」よりは政治色を感じる。

 しかし、これもその中身は「私はチョコレートが好きです。でも鎖国したら、明日からはチョコレートは食べられなくなるでしょう。でもいいんです。我慢すれば!(中略)小豆を甘く煮たもの──アンコだけを食べてゆくことにします」といった言葉を下手な英語で真剣に話すというもので、単純な政治的風刺にとどまらず、おとなにもこどもにもいろんな角度からの解釈を促す、むしろ芸術的な仕掛けを強く感じる作品だった。

 いずれにしても、鑑賞後の感想は「これくらいで撤去しろ!とか問題だ!だとか言われちゃうの?」というもので、正直、かなり驚いた。会田氏が25日に公表したメッセージでも、会田氏は「(「檄」の)文章の内容はある意味「大したことないもの」です。特に穿った意見がそこに書かれているわけではありません」と書いているが、まさにその通りだろう。

 しかも、会田氏は美術館側から「観客からのクレームがあり、東京都庁のしかるべき部署からも要請がきたので、美術館としても協議し、撤去の要請を決定しました」と説明を受けたというが、会田氏が「何件のクレームが来てるんですか?」と尋ねると、その返答は「友の会会員が一名」だったという。

 たったひとりからのクレームで都庁は撤去しろと言い、美術館側もそれを呑んだ──。この事実は、会田氏じゃなくても唖然とするはずだ。さらに、東京都庁のどの部署から撤去要請を言い渡されたのかも、担当者は「それは言えない」と口をつぐんでいるという。

 この原稿を書いている27日現在、作品は撤去されていないが、撤去を要請したという時点でこれは大きな問題だろう。今回の会田家の作品は、繰り返すが、政治的主張など少しも感じられないものである。だが、たとえ政治的主張があったとしても、それで作品展示の有無を決定することは間違っているからだ。

 たとえば、近年の美術館による検閲問題として注目を集めた事例に、2009年4月に沖縄県立美術館で開催された「アトミックサンシャインの中へ in 沖縄 ─日本国平和憲法第九条下における戦後美術」展がある。この展覧会では、東京とニューヨークでは問題なく展示された、天皇をモチーフにした大浦信行氏のコラージュ作品が沖縄での開催前に検閲に遭い、公開されなかった。じつは大浦氏の作品は86年にも富山近代美術館が購入・展示公開しているが、展示が終わってから県会議員が作品を問題視し、富山県は93年に作品の売却と残った図録の焼却処分を決定。こうした背景を理由に、東京での展示の際には抗議がひとつも起こらなかった作品を沖縄県立美術館の館長は展示拒否したのである。

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