災害時に首相が避難所を視察する意義は、被災者が置かれた困難や窮状を肌で知ることにあるはずで、過酷な環境を強いられている避難所にこそ足を運び、被災者の不満に耳を傾けるべきだろう。
にもかかわらず、高市首相は数多ある避難所のなかでも、わざわざエアコン、段ボールベッド、パーテーション、大きなお風呂が揃った場所を訪ね、被災者から「本当にもう至れり尽くせり」「こんな快適な生活はない」と言ってもらって、悦に入っていたのだ。
これでは、「パフォーマンス」「プロパガンダ」のための視察、と言われても仕方がない。
実際、そのパフォーマンスを差し引いて客観的なデータだけを検証してみると、高市首相の震災への関心が実は非常に低いことが浮き彫りになる。
そのひとつが、実際に視察に費やした労力だ。高市首相の視察については、現地の氷川中学校に入って取材したジャーナリストの田中龍作氏が〈クーラー付き、段ボールベッド完備の別格避難所を高市総理が視察したのは、たったの3分間。 電光石火だった。避難生活の辛さが理解できるはずがない。〉とXに投稿。
対して、佐伯耕三内閣広報官のXアカウントが、〈一部SNSで事実と全く異なる情報が流れていますが、高市総理が氷川町の避難所に到着し視察を開始したのは、午後3時13分。視察を終えて避難所を出発したのは、午後4時4分です。避難所視察は51分間ですので、お伝えします〉と反論した。
しかし、内閣広報官の言う「51分間」というのは、あくまで氷川中学校に滞在した時間にすぎない。
官邸が公開した動画や各紙の首相動静をチェックすると、3時21分から13分間は別室で氷川町町長らとの会談に費やし、そのあとすぐ冒頭で紹介した別室での被災者との意見交換が19分間、3時54分まで行われている。
避難所の教室を視察していたのは、中学校に到着した3時13分から20分までの間か、3時54分から氷川中学校を出発する4時4分までに間のどちらかしかなく、そこから官邸の動画に映っている移動や物資の視察を差し引くと、「3分間」かどうかはともかく、避難所になっている教室にいた時間が数分程度なのは、間違いない。
いや、避難者からみると、もっと早く切り上げたという印象もあったようだ。高知新聞が4日付で掲載した「高知新聞の記者現地取材」の記事において、高市首相が視察した氷川中学校の避難者を取材し、こうレポートをしているのだ。
〈避難者の男性(80)は「私のいる教室に首相が来て何かあいさつしていたが、耳が遠くて聞こえんかった。10秒もいなかったと思う。自民党の宣伝でしょ」と冷めた声を漏らした。〉