内調が過去にやってきたこうした謀略を振り返るだけでも、今回、高市政権が設置を目論む「国家情報局」がどんな組織になるか明らかだが、さらに恐ろしいのは、今回の「国家情報局」構想に、安倍政権下で内調の官邸私兵化をエスカレートさせきた張本人である北村氏が、深くかかわっているということだ。
実は今回、高市政権が打ち出した内調の拡大=国家情報局設置はもともと、北村氏が構想したことだった。そのことは、当の北村氏が公言している。
昨年末ごろより様々なメディアに登場し、まるでスポークスマンのように「国家情報局」について喧伝している北村氏だが、今年4月18日付けの毎日新聞のインタビューで、国家情報局について「私が随分前から主張してきたこと」「直接提言したわけではないが、首相は当然ご存じだったのだと思う」と胸を張ったうえ、こう語っているのだ。
「私が内閣情報官として実務に携わった第2次安倍晋三政権では、各省庁が情報を出し惜しみするような問題はなかった。当時は官邸の求心力が強く、おのずと情報が集まってきたからだ。ただ、内閣の情報機能を常に高めておくためには制度化が必要不可欠だ」
ようするに、北村氏は、安倍政権時の内調の状態を制度化し、首相が誰かに関わらず、謀略による官邸支配が可能になるような体制をつくろうとしていたということだろう。
そして、この北村氏の構想に乗っかったのが、高市首相だった。
北村氏は2021年から有識者会議「経済安全保障会議」のメンバーを務めているが、2022年経済安保相となった高市氏とともに経済安全保障制度の整備を推し進めてきた。一緒にメディアに出演して経済安保のPRをしたこともあるし、北村氏が経済安全保障にかんする著書を出版した際には、高市氏がXにこんな投稿をしている。
〈待ちに待っていた北村滋・前国家安全保障局長(元警察庁外事情報部長)の御著書『経済安全保障』が発売になり、入手しました。日本で暗躍するスパイの生々しい話に始まり、更に強化するべき法制度整備のヒントを頂けました。〉(2022年5月23日)
そして、高市氏は先の総裁選で「国家情報局」設置を公約に掲げ、総裁に就任すると、党にその構想を推し進めるインテリジェンス戦略本部を設置。その初会合で、講師を務めたのが北村氏だった。その後、インテリジェンス戦略本部は国家情報局・国家情報会議に関する提言をまとめ、今年3月に高市首相に設置を申し入れた。
つまり、国家情報会議法案=国家情報局の設置構想は、安倍政治の後継者を自認する高市首相と、安倍官邸の独裁支配を担ってきた北村氏の“魔合体”によって生まれたものといってもいいだろう。
だとすれば、この組織が、政権批判を抑え込み、野党や政敵を陥れるための謀略機関となることは必定ではないか。
いや、この2人の最終的な狙いはそんなレベルではとどまらないかもしれない。改憲、安保3文書改定と、「戦争のできる国づくり」に邁進していている高市首相は、かつて「説得できない有権者は抹殺するべき」などと主張するヒトラー本に推薦文を寄せていた。そして、北村氏は内閣情報官に着任する前、戦前・戦中の特高警察、弾圧体制を生んだ法体系を高く評価する論文を警察関係の専門書に発表したことがある。
行政法を専門とする白藤博行・専修大名誉教授は、国家情報会議設置法案について「『戦争する人づくり』を狙っている」と指摘している。
「戦争の遂行は国民の反対が大きければできません。戦争を容認する雰囲気づくりを進め、戦争に反対するものに冷や水を浴びせ、つるし上げてでも抑え込む必要があります。そのために国家が行う諜報(ちょうほう)活動(スパイ活動)で、すべての国民を監視する体制の強化が法案の狙いです」(しんぶん赤旗4月11日付)。
国家情報会議設置法案は、まさに戦前の特高体制を復活させる第一歩なのだ。こんな法律を絶対に成立させてはならない。
(編集部)
最終更新:2026.05.12 08:36